49話 今日もまた
う~っと背伸びをすると、隣でソラがプルプルと揺れている。
朝のポーションを用意してから、簡易調理場で水を沸かす。
テントの中まで運ぶとお茶を作り、残りのお湯を少し大きめの桶に入れる。
タオルをお湯に入れて絞って、全身を拭いていく。
広場だとお湯を使えるからうれしいな。
旅の途中だとなかなかお湯は沸かせない。
水で体を拭いているけれど、寒い時期になると厳しいだろうな。
これからの季節は夏だから大丈夫だけど、冬のためにもっとお金を貯めておかないと。
冬は野ネズミも野兎も狩りにくくなる。
魔物の情報料が入ったので、予定より多く貯まっているけれど、まだまだ足りない。
「ふ~、さっぱり」
新しい服を着て、着ていた服を汚れ物専用のバッグに入れる。
時間がある時にまた洗わないとな。
木の実を食べながら、今日の予定を考える。
えっと、今日は野ネズミの罠の確認だな。
あ~、昨日は食べ過ぎで罠を作れなかったのだった。
体が重くて動きたくなかった。
あんな状態になったのは初めてだ。
やっぱり2本で止めて置いて、1本を今日の夕飯に回せばよかったな。
お茶を飲みながら少し休憩。
「よし!ソラ、今日も頑張ろうね」
マジックバッグに汚れ物専用のバッグを入れて、野ネズミの罠を確認しに行く。
ソラ専用のバッグを提げてソラを呼ぶと、ぴょんと跳ねて私の足元にやって来る。
ソラをバッグに入れてテントから出る。
使ったお湯を、排水用の溝に捨てて桶をテントの中に入れてテントを閉める。
忘れ物が無いか確認して、森へ向かう。
管理人さんや見回りの人、門番さんなどに声をかけられながら森へ進む。
声をかけられるたびにドキドキするけど、最初の頃のようにビクつく事は減った。
ただ、恥ずかしさはなかなか消えない。
森へ入ると、また不思議な気配を感じた。
周りを確認するが何もいない。
「なんなんだろう?ソラ、分かる?」
「ぷっぷぷ~」
分かっているのかな?
ソラがこの反応なら大丈夫かな?
疑問に思うも、気配は消えているので探しようがない。
とりあえず野ネズミの罠を見に行こう。
「あ~、駄目だ。罠がつぶされている」
何か動物にでも荒らされたのかな?
罠がつぶれていた。
もう1つの罠を確認しに行こう。
この森は罠がつぶされる確率が高いな。
そう言えばノノシと言う動物がいるって言っていた。
……ん?
あっ、昨日の美味しいお肉だ。
名物っていう事は、かなりの数がこの森に居るのだろうか?
「あ~、こっちもか」
野ネズミの罠1つと前日の野兎の罠1つを確認するが、どちらも潰れていた。
残念。
とりあえず洗濯して、広場に戻って罠を作ろう。
いっぱい仕掛ければ、何とかなるかな。
川へ向かいバッグから洗濯物を取り出そうとすると、後ろに気配が。
後ろを向くと、昨日と同じ光景が。
口に何かを咥えたアダンダラだ。
グルルと近づいて来るので頭を撫でる。
何だろう?
ものすごく懐かれている感じがする。
いいのかな?
ある程度満足したのかアダンダラが口に咥えていた物を私の前に置く。
あれ?
今日は野兎だけではないようだ。
野兎が多くて5匹、野ネズミが3匹。
そして鳥?
「これって野バト?」
野バトについては本に載っていたので覚えている。
アダンダラを見ると前足で私の方へ寄せる。
ん~、いいか貰ってしまおう。
「ありがとう」
グルルと鳴いて頭に顔をすり寄せる。
顔はちょっと怖いけど可愛いな。
ギュッと抱きしめてみると、ポカポカと暖かい。
……ってダメだ。
早く解体をしてしまわないと。
アダンダラを離して、解体を始める。
解体が終わった野兎と野ネズミのお肉を、バナの葉で包みバッグに入れる。
最後に野バト。
鳥の解体は初めてで、ドキドキしながら解体を進める。
「出来た~」
初めての野バトの解体。
ちょっと失敗してしまったが……。
売れない場合は自分で食べよう。
野バトのお肉をバナの葉で包みバッグに入れる。
「さてと」
ソラを探し後ろを向くと、ソラとアダンダラが寝ている。
気持よさそうだな……ってダメだ、急がないと。
「ソラ、起きて~。肉を売りに行くよ」
アダンダラが目を覚まして、ソラを転がす。
転がされたソラは少し不服そうに揺れている。
「昨日も今日もありがとう。無理しちゃダメだよ」
アダンダラはグルルっと鳴くと颯爽と走り去る。
やっぱり走る姿がかっこいいな。
ソラを見ると、また縦運動をしている。
「それ、何なんだろうね」
「ぷっぷぷ~」
うん、分からない。
とりあえず肉を売りに村へ戻ろう。
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