20.新しいスキル
新しく得たスキルを検証してみよう。
新しいスキルは全部で九つ。
無音移動LV3
暗視LV1
急所突きLV1
気配遮断LV4
鑑定妨害LV1
索敵LV1
望遠LV1
敏捷強化LV1
器用強化LV1
一気に増えたな……。
敏捷強化と、器用強化に関しては、効果は既に判明している。
レベルが一上がるごとに、『敏捷』、『器用』にそれぞれ+10の補正。
俺の初期の敏捷が1だったことを考えればスゲー効果だよな。十倍だよ、十倍。
身体めっちゃ軽いもん。
次に『鑑定妨害』。
これは、まあそのままの効果だろう。
LV1なら、同じく鑑定のLV1を妨害できるとか、そういう感じじゃないかな。
『無音移動』は室内を歩いて確かめてみた。
これ、凄い。
全然音が鳴らない。
歩くたびに起こる足音や衣擦れの音さえも無いのだ。
だが、勿論万能ではない。
例えば、匂い。
匂いに関しては隠せないみたいで、モモには通用しなかった。
嗅覚の強いモンスターには注意しないとな。
だが存在感を感じさせなくする『気配遮断』と組み合わせれば、奇襲を仕掛けるうえでこの上なく役に立つだろう。
『急所突き』は、実際の戦闘で使わないと試せないか。
モモに試すわけにもいかないし。モモ虐待、駄目、絶対。
まあ、このスキルも、言葉通りに捉えるなら、相手の急所に当たりやすくする感じだろうな。アサシンなんかがよく持ってるスキルだし。
『暗視』、『索敵』、『望遠』もかなり便利なスキルだ。
暗視は文字通り暗闇の中でも景色がハッキリ見えるスキルだ。
あのテレビとかで見る映像と同じだね。暗視スコープとかカメラとかで見える映像。
だいたいあんな感じに見える。
望遠も同じく遠くのものが見えるスキル。
距離的にはだいたい数十メートルくらい先までなら、至近距離で見るのと変わらない精度で見る事が出来る。
索敵は、周囲に居る生き物の気配を感じ取れるようになるスキルの様だ。
効果範囲は、今のところは半径十メートルくらいかな。
モモに離れて貰って試したら、大体そのくらいの広さだった。
この三つはどれもレベル依存のスキルだ。
レベルが上がるごとに効果も高くなってくるのだろう。
どれも実用的で良いスキルだ。
「さて、どうポイントを割り振るかなー」
残高は22ポイント。
あ、でも新しいスキルもいくつかとっておきたいんだよな。
とりあえず前回の時に保留していた『防衛本能』を取得するか。
これは2ポイント消費。
次に初期獲得可能スキルの中から
毒耐性、麻痺耐性、ウイルス耐性、熱耐性、あおり耐性、HP自動回復
の六つを習得する。
耐性スキルはいくつあっても良い筈だ。
あおり耐性は……まあ、一応ね。
それにHP回復系は探索において必須だろう。
初期のスキルはどれも1ポイントだ。
なので合計6ポイント消費。
残り14ポイントは、既存スキルのレベル上げに使おう。
索敵をLV3に、器用強化をLV2に、敏捷強化をLV3に、麻痺耐性をLV2に上げる。
よし、こんなもんかな。
クドウ カズト
レベル6
HP :30/30
MP :6/6
力 :50
耐久 :47
敏捷 :92→112
器用 :90→100
魔力 :0
対魔力:0
SP :22→0
JP :0
職業
暗殺者LV1
狩人LV1
固有スキル
早熟
スキル
無音移動LV3、暗視LV1、急所突きLV1、気配遮断LV4、鑑定妨害LV1
索敵LV3、望遠LV1、敏捷強化LV3、器用強化LV2
観察LV4、聞き耳LV4、
肉体強化LV7、剣術LV3、ストレス耐性LV5、恐怖耐性LV5、毒耐性LV1、麻痺耐性LV2、ウイルス耐性LV1、熱耐性LV1、あおり耐性LV1、HP自動回復LV1、敵意感知LV4、危機感知LV5、潜伏LV2、逃走LV1、防衛本能LV1、アイテムボックスLV7
パーティーメンバー
モモ
柴犬 Lv3
敏捷と器用が、ついに100を突破だ。
最初のステータスに比べれば恐ろしい程の成長っぷりだな。
ふっ、もう何も怖くないぜ。
……嘘です。めっちゃ怖いよ。
どんだけステータスが上がっても、根っこは俺だしなぁ……。
安全第一、保身が一番だ。
「お、もうこんな時間か」
時計を見るともう11時を回っていた。
職業やスキルの選択に予想以上に時間をかけてたらしい。
「モモ、少し早いけど昼飯にするか?」
「わん!」
キッチンでお湯を沸かし、カップラーメンを作る。
それとコンビニで手に入れたおにぎりと缶詰で昼食を済ませる。
モモにはドッグフードと水だ。
そして、昼食の後はモモと簡単な打ち合わせをした。
簡単なハンドサインや合図で、連携を行えるようにね。
やはりと言うか、流石と言うか、モモは直ぐに覚えた。さすモモ。
少し食休みを挟み、外へ出る。
次は実戦で、新しいスキルを試そう。
レベルもなるべく早く上げたいし。
しばらく街を歩くと、生協が見えてきた。
この辺りの地元のお年寄りがよく利用していたな。
俺もたまに利用してた。
数日振りなのに、なんか久々に感じてしまうな。
「おや……?」
『索敵』と『敵意感知』、『危機感知』に反応があった。
モンスターが居るな。
壁際に隠れて様子を窺うと、砕けた窓ガラスの向こうにゴブリンの集団が居るのが見えた。
『望遠』がある今、かなり遠く離れていても、中の様子がハッキリと見える。
ホント、凄い便利だなこのスキル。
見えるだけでゴブリンが四匹か。……多いな。
ゴブリン達は中の物を好き勝手に壊しながら、果物や野菜なんかを頬張っている。
ああ、やっぱゴブリンも腹は減るんだなと、場違いな感想を抱く。
「……ん?」
俺は目を凝らす。
四匹のゴブリンの後ろ。
そこに特徴的なゴブリンが居た。
デカい。
体格がやたら大きく、他のゴブリンに比べ身に着けている装飾品や装備が立派な奴がいる。
「ホブ・ゴブリン……」
そんな単語が浮かぶ。
ゴブリンの上位種。
オークにも、あのハイ・オークの様な上位存在が居たんだ。
ゴブリンにも同じような存在が居たっておかしくない。
どうする?
引くか?
いや、『危機感知』の反応が薄い。
それにあのハイ・オークに感じた『異常なまでの危機感』が湧かない。
モモの新しいスキルも判明したし、俺自身も強くなった。
やれるのか?今の俺とモモなら。
「……」
身体が震える。
「……モモ」
「わん」
「ついて来てくれるか?」
「わん!」
何を今更と言わんばかりに、モモは体を擦り寄せてくる。
はは、俺よりも肝が据わってるよな、モモは……。
モモを撫でてる内に、体の震えは収まった。
まあ、ヤバくなったらすぐに逃げよう。
「うっし。それじゃあ、行くか」
「わん!」
気合を入れ直し、俺とモモは生協へ向かう事に決めた。