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第97話 やり残したこと



 終わり良ければ、全てよし。

 この言葉を考えのが誰なのかは知らんが、俺たちの戦いは終わらない。

 たとえ人族の軍勢を退けても、俺たちにはまだ一つやるべきことが残っていた。



 妖精王の間の正面扉を豪快に開ける。


「ぐぅ……ぐぅ……ふへへ」


 妖精王め、まだ寝てやがったか。

 とりあえず寝息を立てているアレンの脛に、強烈な蹴りをお見舞いする。


「いっっっっってええええ、んですけどおおおお!!」


 あまりにも本気で蹴ったせいで骨までいったようだ。

 激痛で飛び起きたアレンは玉座から赤い絨毯へと勢いよく転がり落ちた。


「どうせすぐに治るのだから騒ぐな」


「あれ……君たち……戦いは? 終わったのかい!?」


「終わったも何も、もうあれから二日も経過している。どれだけ寝ているんだ、殺すぞ」


「あらま……かなり怒ってらっしゃるようで」


「オルクスからすべて聞いた。貴様、俺たちが監禁されているのを知っていながら放置していたそうじゃないか」


「え、ええと、それは……」


「とりあえず一発殴らせろ」


「なんでッ!?」


 アレンは訳の分からない顔を浮かべていた。

 魔力障壁の構築に魔力を費やしすぎたのは知っている、昏睡に落ちるのは仕方ないとしよう。


 しかしオルクス曰く「妖精王様のご復活は一晩あれば、すぐのはず」だ。

 コイツ、二日も経過するというのに素で寝ていやがったのだ。


「君に殴られたら寝るどころか気絶しちゃうよッ!」


「ご安心ください妖精王」


 オルクスがアレンの御前で跪いた。

 その横顔は不自然にも腫れていた。


「死にはしませんから、一発殴られましょ?」


「お前もかよっっっ!!」


 くだらん前置きはいい。

 拳にありったけの魔力を込める。


 それは、ドラゴンすら一撃で仕留める魔力量。

 拳から発せられる圧倒的な魔力の質量に、王の間が揺れる。


「ちょっ! ちょっとちょっと! あ、あ、えええと、一つだけ言い訳があるんだけど、聞いてくれるかい?」


「―――歯を食いしばれ」


 玉座ごとアレンが吹っ飛んだ。

 顔腫れ組、これで二名だ。





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