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第74話 混乱


 西の森へ向かう道中、ゴブリンの群れと何回かすれ違った。

 この数は確かに異様であり、普通のゴブリンとは違った容姿のものも見えた。

 更に人間と同じようにパーティを組んでいるようにも見え、六匹で一組となって動いている様子。

 

 後衛役を務められる、ゴブリンアーチャーやゴブリンメイジ。

 前衛として力を発揮する、ゴブリンウォーリアやゴブリンソルジャー。

 サポート役をこなせる、ゴブリンシーフやゴブリンスカウト。


 これだけ多種多様なゴブリンを見られるのは珍しいため、マイケルから教えてもらった情報を頼りにすれ違うゴブリン達を見て楽しみながら、俺は西の森へとやってきた。

 森の中からは数えきれないほどの魔物の気配があり、見慣れているただのゴブリンですらかなりの強さを感じる。


 ゴブリンキングが、近くにいるゴブリンの力を強めるという情報は本当なようだな。

 様々な役職を与えながら、単純な強化も兼ねる。


 人間の王様なんかよりも、ゴブリンキングの方が王様として有能なのは間違いない。

 西の森に辿り着いてからは木の上に身を潜めて、木から木へと飛び移りながらゴブリンキングを探っていく。


 西の森までの道中でも気づいていた通り、森にいるゴブリンも人間のパーティと同じように六匹で一組となって動いており、数の強みを生かしながら動いていることが分かった。

 その一つのパーティのリーダ―役は良い装備を身に纏っており、他のゴブリン達よりも一回り体の大きい――ホブゴブリンという種族であることは一目で分かる。


 強い奴をリーダーとして据えるというのはごく普通のことなのだが、見た目だけでリーダーを判別できるというのは俺にとっても非常に好都合。

 全てのゴブリンを倒す余裕はないが、リーダー役を担っているホブゴブリンに狙いを定め、すれ違ったホブゴブリンは全て石での投擲で撃ち殺していった。

 

 リーダー役がいなくなるだけでもパーティの力は一気に弱まるし、これから総力戦を行うであろう後続の冒険者たちのため、ゴブリンの群れの戦力を削っておく。

 そんな考えからすれ違うホブゴブリンは確実に殺しつつも、しっかりと隠密行動は決め、俺はゴブリン達に見つかることなく森の中心付近へと辿り着いた。


 マイケルの話では森の泉の近くといっていたため、微かに聞こえる水の音を頼りに更に進んで行くと――泉を中心に群れているゴブリン達を見つけた。

 稚拙な造りではあるが、藁やら木材で作られた建物がいくつも建てられており、そんな集落の奥にある一際大きな建物から強い気配を感じる。


 ……ただ一つ気になるのは、そんな建物の中から感じる気配よりも強い気配。

 その気配の方向は、ゴブリンの集落の後ろから感じ取れる。 


 方向的に考えるとゴブリンキングがその場所を通っているはずのため、見逃したのかそれともゴブリンキングの上位種なのか。

 まぁそもそも集落の奥の建物にいる奴が、ゴブリンキングかどうかもまだ分からない。


 まずは集落の奥の建物にいる奴を倒してから、その奥にいる一番強い気配を放つ奴の様子も見に行こう。

 ここからの動きを決めた俺は、まず手前の粗末な建物に火炎瓶をぶん投げた。


 燃えやすい材質でできている建物は一気に燃え始め、その音や臭いに釣られて建物に潜んでいたゴブリン達が一斉に出てきた。

 一番奥の建物にいたゴブリンも例外ではなく、オーガかとも見違えるほどの巨体のゴブリンが何やら大声で指示を飛ばしている。


 疑っていたが、あれはゴブリンキングで間違いないだろう。

 周りのゴブリンが指示を従順に聞いているし、見た目もゴブリンキングそのもの。


 これで標的の確認ができたため、後は一気に近づいて首を落とすだけ。

 鋭く息を吐いて久しぶりに深く集中——。


 レスリーから貰った煙玉を五つ取り出し、ゴブリンキングの下まで煙のルートが繋がるように煙玉を的確に放り投げていく。

 そして気配を完全に断って煙に紛れてながら、ゴブリンの寝床に向かって火炎瓶を放り投げていった。


 火炎瓶を織り交ぜることで、煙玉をあくまで燃えた際に立ち昇った煙だと誤認させつつ、俺は混乱しているゴブリン達の間を抜けて一気にゴブリンキングの下へと駆けていく。

 泉の周辺一帯を覆う煙と、燃え盛る建物のせいでゴブリン達は大混乱状態。


 俺自身も煙で周囲は見えないが、ゴブリンキングは大声を張り上げて指示を飛ばしているため、こっちから位置は特定できている。

 スルスルとゴブリンの間を縫って、あっという間にゴブリンキングの目の前まで辿り着いた。


 近くで見ると化け物な体格をしているが、人型の魔物ならば瞬殺できる。

 俺が懐まで潜り込んだところで、ようやくゴブリンキングを俺の存在に気づいて腰に差している剣を抜こうとしたが――遅すぎる。


 逆手持ちで首を半分まで斬り込み、順手に握り替えつつ反対方向から再び斬り

裂き――ゴブリンキングの首を刎ね落とした。

 叫び声を上げることすら許さなかった一瞬の出来事。


 大量の煙と燃え盛る建物のせいで、ゴブリン達はまだ自分達のリーダーを討ち取られたことに気がついていない。

 俺はそんなゴブリン達を後目に、刈り取った首を抱えてその場を後にしたのだった。



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