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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その9


 翼を大きく広げ、ゆっくりとにじり寄ってくるフライレイクファルコン。

 普通なら深々と斬り裂いた傷が痛々しく写るはずなのだが、真っ赤な羽毛のせいで流れ出ている血すらかっこよく見える。


 つい見惚れてしまうが、今俺が考えるべきことはフライレイクファルコンが飛行できるのかどうかを見極めること。

 歩いて近づいていることから、傷のせいで飛べないのではと推測しているが……まだ分からない。


 攻撃したタイミングで飛ばれて、爪で掴まれたらいくら俺でも何もできなくなる。

 手負いとはいえ油断はできない。

 ――が、こちらの圧倒的優位は変わらない。


 一定の距離を取りながら氷魔法を唱え、チクチクとダメージを与えながら向こうから動かざるを得ない状況を作っていく。

 攻撃のタイミングでフライレイクファルコンの飛行の有無を見て、仮に飛べないのだとしたらチェックメイト。


 一挙手一頭足に注意しながら見ていると、とうとう痺れを切らしたフライレイクファルコンが翼をはためかせて空を飛んだ。

 傷のせいで見るからにバランスが悪いが、それでも空を飛んでおり――ある程度の高さまで飛んでから俺に突っ込むように滑空してきた。


 無理矢理にでも飛んでくると思っていたが、やはり飛んできたな。

 巨体が滑空しながら突っ込んでくるのは迫力があるし、まともに食らったら俺の体でも弾け飛ぶ。


 油断も隙もないとはこのことだが……満身創痍である事実は揺るがない。

 体のブレから細かな調整はできないと判断し、俺は突っ込んでくるフライレイクファルコンをギリギリまで引き寄せてから――体を捻りながら攻撃をかわししつつ、カウンターの一刀を叩き込んだ。


 俺の力だけでなく、フライレイクファルコンの突っ込んできた力も加わった一撃は、胴体部分を先ほどよりも深く、そして長く斬り裂いた。

 斬り裂かれたフライレイクファルコンは着地に失敗し、平原を勢いそのままに転がる。


 フライレイクファルコンが転がった平原は大量の血で染まっており、この血液の量だけでもう動けないぐらいの傷を負わせることができたのが分かった。

 俺はトドメを刺すために、倒れたまま動かないフライレイクファルコンの下に向かう。


 呼吸は大きく乱れており、体も力をいれようとしているが一切動かない。

 それでも目はまだ死んでおらず、俺を殺気の籠めて睨みつけている。


「できることなら万全なお前と戦いたかった。……が、元職業柄、油断や隙を見逃すことはできない。命は大事に頂かせてもらう」


 言葉が分からないであろうフライレイクファルコンに声を掛けても無駄だろうが、俺は思いの丈を伝えてから頭を落としてトドメを刺した。

 そして手を合わせてから、解体作業へと移ったのだった。



 体が大きいこともあり、血抜きも内臓処理も大変な上に解体自体も時間がかかり、半日以上も要してしまった。

 平原に積み上げた肉の量を見て、俺は更に絶望してしまう。


 この大量の肉を、ヨークウィッチまで運び込むまでが今回の仕事。

 鮮度を保つためにこの場で解体したが、解体前の状態である程度まで運ぶのが正解だったかもしれない。


 今更ながら若干後悔するが、後悔しても何も解決しないため、とりあえず腐敗防止と虫等が寄らないように氷魔法で一気に凍らせてから、その間に簡易的な台車を作成する。

 結果として出来上がったのは、不格好な雪車のようなものだが……これでも何もないよりかはマシ。


 俺は凍らせたフライレイクファルコンの肉を、お手製の雪車の上に乗せていく。

 後は……アルデンギウスをどうするかだけだ。


 俺が狩った魔物ではないし、この場に放置したままでいい気もしてくるのだが、せっかくだから持ち帰りたい気持ちもある。

 正直、フライレイクファルコンを狩るよりも、あのグレッグ海の奥底に生息しているアルデンギウスの方が、俺としては捕まえづらいからな。


 マイケル曰く、グレッグ海の最も美味な魔物ということも聞いていたし、運ぶのが面倒くさいという理由で放置するのはあまりにももったいない。

 色々なことを天秤にかけた結果、アルデンギウスも持ち帰ることにした俺は、早速持ち運びやすいように解体し、大きな葉で挟みながらフライレイクファルコンの肉の上に積み上げていく。


 最終的に出来上がったのが、意味が分からないほど山盛りになった凍った肉塊。

 少しでもバランスを崩せば肉の山が崩壊するため、慎重に運ばないといけない。


 車輪がついていればまだ楽だったと思うけど、アルデンギウスは完全に想定外だったこともあって車輪なんか持ってきていない。

 大きく息を吐いて色々なことを諦めてから、俺は肉の積み上がった雪車を引いて、ヨークウィッチを目指して歩を進めた。


 平坦且つ、雪車が通れる道幅の広い道しか通れず、さらにバランスも崩せない上にめちゃくちゃ重いということもあり……。

 ヨークウィッチに着いたのは営業予定日の前日。

 俺は疲れを取る時間もないまま、ひーひー言いながら営業の準備に取りかかることになったのだった。



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