夜明けにはサンドイッチとコーヒーを 前編
レイクハルト、領主の館――。
二階にある客室。妹の部屋と似たような造りの、結構豪華な広い部屋。その部屋にあるふかふかのベッドに身体を沈ませて、私はため息を吐いた。
「……眠れない……」
勿論眠れない理由は、あの竜蓮桃だ。
妹とユエがはしゃいでいたあの時、私がぐったりしていたのは、肉体的にではなくて精神的なものだったらしい。ふたりが空の散歩から無事に戻ってきて、妹の熱が完璧に下がったことを確認した途端、身体の異変に気がついた。
私の身体に起きた異変、それは元気が有り余って仕方がないこと。
恐ろしいことに、あの後日が暮れ、夕食を食べ、いざ寝よう! となっても、眠気が全く訪れる様子がなかった。それどころか、身体の中から恐ろしいほどの力が涌いてくるような感覚がして、なんだか身体がそわそわして落ち着かない。
竜蓮桃を一緒に味見したジェイドさんもそうだったらしく、彼もなんだか困ったような顔をして、領主の館の中庭で剣を振っていた。どうやら肉体を酷使すれば眠れるのではないか――と思ったようだけれども、いくら剣を振っても疲れなくて困ったと途方に暮れていた。
眠れない夜なんて、随分ロマンチックな言葉だけれども、それは思い悩んで眠れないからロマンチックなのであって、強制的に眠れない場合は苦痛でしかない。
……正直言って寝付きは良いほうなのだ。今までどんなことがあろうと睡眠だけは確保していた。
眠れない――たったそれだけだけれども、私にとっては初めての体験で。
そのことに戸惑いながらも、奇跡的に眠気が沸き上がってこないかと、布団に潜り込んで目を瞑ってみたりしたのだけれど、結局は徒労に終わった。
眠れないのならしょうがない。
……私は持て余した時間を使って、ケルカさんの為にティターニアをおびき寄せようと、部屋のテーブルに色々と料理やお酒を並べた。
「ティタちゃん、こないね」
私と同様に眠れない妹も、暇を持て余して私の部屋へとやってきていた。ふたりでじぃっとテーブルの上に並んだ料理を眺める。
手を付けたら妖精女王をおびき寄せる効果が無くなりそうな気がしたので、ひたすらティターニアが来るのを待った。
けれども、待てども待てどもティターニアは現れてくれなくて――。
「やっぱり、チータラがないと駄目なんじゃない?」
「それか梅酒だよねえ……ティターニア、好みのつまみがないとうるさいから」
ふたり顔を見合わせて、ため息を吐く。
一刻も早く二人を会わせたいのに……こういう時に限って現れない妖精女王に、私の中に苛立ちが募った。
その時、部屋をノックする音が聞こえた。
……誰だろう? こんな夜中に。
そう思って扉に近づくと、聞こえたのはジェイドさんの声。
そっと扉を開けると、いつもの鎧姿ではなくて私服を身に纏ったジェイドさんがいた。
「起きていた?」
「……ご覧のとおりです。眠れなくて」
「だろうね」
「どうしたんですか? こんな夜中に」
「ああ、眠れないのなら一緒に出かけないかと思って」
「……え、こんな夜中にですか?」
ジェイドさんはそういうと、片手に持っていたバスケットを私に見えるように持ち上げた。
ジェイドさんが手にした大きなバスケットには、随分といろんなものが入っているようだ。上に掛かった布巾からは背の高いパンがはみ出していた。
「眠れないし――部屋に閉じこもっているくらいなら、出かけよう。いいだろ?」
「ちょ、ちょっと待って下さい! ……ええと、ええと!」
私はいきなりジェイドさんがそんなことを言い出すものだから、焦ってしまった。
これってもしや……デート……ええと、デートってなんだっけ……いや、そうじゃなくって!
あわあわ動揺している私を、ジェイドさんは呆れ顔で見ていた。
「今更、何をそんなに焦ることがあるんだよ……」
「そ、そうじゃなくって。ほら、私は浄化の旅のサポートでここに来たんですから、遊びに来たんじゃないんですよ! ふたりで呑気に出かけている場合じゃあ――」
「行ってくればいいじゃない!」
そのとき、ひょい、と妹が私の後ろから顔を出した。
妹はニヤニヤしながら私達をみると、ぐっと親指を突き出した。
「さっきおかゆと桃を食べたから、元気いっぱいだよ! 今晩は、おねえちゃんの好きにしたらいいじゃない」
「で、でも……」
「でもも、何もないよ! 私が良いって言ってるんだからいいの!」
そう言うと、妹は扉の隙間からするりと廊下に抜け出すと、ジェイドさんに小声で何か言った。何を言ったのかよく聞こえなかったけれど、ジェイドさんは妹に小さく頷いた。
妹はくるりと私の方を振り向くと――にかっと笑って「楽しんできてね!」といって去っていってしまった。
妹の背中を見送ったあと、ジェイドさんの顔をみる。
ジェイドさんはにっこり笑って、「聖女様のお許しも出たことだし、行こうか」と私の肩を叩いた。
すると、途端になんだか恥ずかしくなってきて、私は顔が熱くなってきたのがわかった。
「いや、ええと……ちょ、ちょっと待って下さい! ステイ! ステイですよ!」
私はまるで愛犬に言うように、ジェイドさんに手のひらを突き出してそこに止めると、勢い良く扉を閉めた。
そして、混乱する頭で一生懸命考えた。
――ちょっと待て、もしかしてあれか。あれなのか。これってデートのお誘いってやつなのか。
いいのかな。本当に。いや、肝心の妹がいいって言っているから、いいのかな……。
そういえば、日本で気持ちを確かめあったあの日以降、デートらしいデートなんてしてこなかった。つまり……。
……初めての、デートなんじゃないか、これ……!!!!
私は部屋においてあった荷物へ獲物を狩る肉食獣のように飛びつくと、中をごそごそと漁って、良さげな服がないか探した。
いきなりデートなんて言われても、女には色々と準備があるのだ……!
私は今まで着ていた服を一瞬にして脱ぎ捨て、手持ちの中でマシな服をベッドの上に広げた。
「茜? どうしたんだ?」
「なななな、なんでもないですよ! ジェイドさん、格好は動きやすい方がいいんですかね!」
「ああ、着替えているのか。そうだね、出来ればそうして欲しいけど」
「了解ですッッ!」
デート……デートだから、普段よりも可愛らしさ重視の方がいいだろう。
じぃっと広げた服を眺める。……うーん、わからない!
そのとき、ふと日本に居た頃の記憶が蘇ってきた。
前に雑誌で「完全解説! デートで男を上手く落とす方法10選」という記事を読んだ記憶がある。そのときは「ふーん」なんて思っていたんだけれど。その記事に、ふんわりシルエットのワンピースは鉄板とあったような気がする……!
ちらりと、一着だけあるワンピースを見た。
ふんわり! こやつ、ふんわりしておる……!
「鉄板、なんて素晴らしい響き……! 君に決めた……!」
私はそのワンピースを抱きしめて頬ずりした。持ってきてよかった。
さて、次は靴だ。……ううう、靴はずっと履いている実用性重視の頑丈な革のブーツしかない。無骨! 足元だけ超無骨! だけど、それしか選択肢がないのだから仕方がない。
あとは……。
私はちらりと窓の外を見た。外は真っ暗。しかも季節は秋だ。きっと、外は寒いだろう。
厚めのデニールのタイツを引っ張り出して履き、更に温かい素材のカーディガンを羽織った。
……なんとか様になったような気がする。動きやすさ重視の普段着よりは、可愛らしい気もするし、気の所為のような感じもする。うむ、私にはこれが限界だ!
「あー……でも、もうちょっと温かいほうが良いよね……。
最近は、十代の頃よりも、寒さに堪えられなくなってきたもの」
私はこっそりタイツの上に靴下も履いた。……少し不格好だけど、ブーツを履くからわかるまい。足先の冷えは体に毒だ。
それに、寝る前だったから、すっぴんだった顔にも化粧を施す。というか、私ジェイドさんの前にすっぴんで……! なんてこった! 切腹したい! いや、旅の最中に結構さらけ出していた気がするけど……!
備え付けられていた鏡の前で何度もくるくる回って、おかしくないか確認をする。
服よし! 化粧よし! ……多分、よし!
確認を終えた私は、扉の前に立って深呼吸を何度かした。
そして、そっと扉を開けると、ジェイドさんが何故か肩を震わせて笑っていた。
「……温かい鉄板がどうしたって?」
……どうやら、私の独り言は丸聞こえだったらしい。
私は羞恥心で顔を真っ赤にして、さらにその後ジェイドさんに「可愛い格好だね」と褒められて、益々真っ赤になってしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ジェイドさんと一緒に領主の館の外に出ると、深夜だからか街の灯りはほぼ落とされていた。
しん、と静まり返る街は、なんだか昼間に見た印象とは随分違う。
日中であれば、この街の長い歴史を表しているような石造りの家々は、見惚れるほど美しかったけれども、月明かりのもと静まり返った街の中で見る家々は、どこかその積み重ねてきた歴史に比例して、見ているものを拒絶しているような、そんな冷たい雰囲気だ。
私とジェイドさんの靴が、コツコツと石畳を叩く音だけが町中に響いている。
この街は階段が多い。天辺にある領主の館から、湖の畔に向かって長く長く階段が続いている。
ジェイドさんは今日到着したばかりだというのに、目的地に向かって迷いなく足を進めた。
私はジェイドさんの少し後ろを歩きながら、彼の手の温もりを感じながら歩いていた。
……そっと、ジェイドさんと繋いだ手を見る。
そういえば、初めて彼と出会った時は、手を繋ぐことすらなんだか恥ずかしくて、くすぐったくて……ちょっぴり苦手だったなあと思い出す。
からかっているんだか、本気なんだかよくわからないジェイドさんに文句を言いながらも、彼の手の温もりのお陰で、見ず知らずの異世界の市場で不安を感じることもなく買い物ができたっけ。
「茜。向こうの桟橋までいくからね」
「はい!」
気がつけば、彼も敬語じゃなくなって、手を繋ぐことも違和感すら感じなくなって――……付き合うことになるなんて、思いもよらなかった。
そうだよ、今まで恋なんてとんと縁が無かったのに。
それが、異世界に来て好きな人を見つけてしまうなんて、おかしな話だなあとおもう。
私が堪らず笑いを零すと、それに気がついたジェイドさんが首を傾げた。
「茜? どうしたの?」
「いえ、なんていうか。……ちょっと、今までのことを思い出していて。それに、初めてのデートだから、ちょっぴり嬉しくてですね」
「……あれ。初めて? そうだっけ」
「ええええ!」
ジェイドさんは私がそう言うと、うーん、と首を捻った。
確かに護衛騎士と護衛対象だからか、色んな所にふたりきりで出かけることも多いけれども!
普段の買い物や、料理関連でのお出かけのあれやこれやとデートを一緒くたにはしてほしくない!
私が抗議をするために口を開こうとすると、その前にジェイドさんはずいっと顔を寄せてきて、いたずらっぽく笑った。
「冗談」
「……! も、もう!」
なんとも絶妙なタイミングでそんなことを言ったものだから、私は自分の中の昂ぶっていた感情の行き場を失って、脱力してしまった。
ジェイドさんはからからと楽しそうに笑うと、「いくよ」と言って目的地へ向けてまた一歩踏み出した。
今日の月は下弦の月。半身を闇に溶け込ませたその月は、日に日に新月に向けて身体を欠けさせていく。
深夜から夜明けにかけて空高く上がる下弦の月は、夜更かしをしない私からすると中々見ることが出来ない貴重なものだ。
そんな月を眺められたことが嬉しくて、足取りも自然と軽くなる。
レイクハルトの街の長い長い階段を降りきって、湖のほとりまでやってきた。
湖の表面には、風に吹かれて小さな波が起きていて、まるで海のようなさざ波の音が聞こえる。
月の光を反射して、湖面がときたまキラリと光る。けれども、それ以外は闇に沈んでいる湖面は、なんだか吸い込まれそうで少し怖い。
湖に張り出すようにして設えられた小さな桟橋、その上を歩いていく。
ぎしぎしと軋む桟橋を渡りきった辺りに、小舟が停まっていた。
「あれに乗るよ」
「……は、はい!」
ジェイドさんはひらりと身体を翻し、その小舟に降り立つと私に手を差し出した。
その手をしっかりと掴んで、私も小舟へと降り立つ。ぐらりと一瞬足元が揺れたけれども、ジェイドさんが身体を受け止めてくれて、直ぐに安定した。
ジェイドさんは小舟に備え付けられていたランプに火を入れた。途端に、ランプの温かい灯りが辺りを照らした。
ジェイドさんがオールを持って漕ぐと、ゆっくりと湖面を滑るように小舟が進み始めた。
真っ暗闇の中をランプひとつの灯りで進んでいく。なんだか、映画に出てくる冒険者のような気分だ。
やがて、湖面から顔を出している大きな遺跡が近づいてきた。
周りの遺跡が一様に水に沈んでいるのに、その遺跡だけは建物がよほど巨大なものだったのか、ぽつんと湖面から顔を覗かせていた。
嘗ては立派な建物だったのだろう、小舟のランプの灯りに照らされたその遺跡は、長年の風雨に晒されたせいか積まれた石が所々ひび割れていて、水面近くには水苔のようなものがこびりついているのが見えた。所々に彫られた彫刻も大半が欠けていて、一体何が彫られていたのかすら、直ぐには判別できないものばかりだ。
そして、何よりも目を引くのが、遺跡の上部にある高く聳える塔だ。
丸い形をしたその塔は、蔦をその身に絡ませ、月明かりに照らされてひっそりとそこにあった。
ジェイドさんは遺跡に小舟を寄せると、小舟を繋ぐためのロープを手に、ひらりと遺跡の中に身を踊らせた。
そして、どこかにロープを縛って小舟を固定すると、私に向かって手を差し出してきた。
その手を取って遺跡の中に足を踏み入れる。
すると、その中に入った瞬間、黴のような青臭いにおいが鼻をつき、更にはふわりと埃が舞い上がった。
「……ちょっとここは臭うね。先を急ごう」
「はい。あ、バスケット持ちますよ」
「重いし、大丈夫だよ」
「でも、ジェイドさんにはランプで前を照らしてもらってますからね。遠慮せずに! さあさあ!」
「……デートで女性に荷物を持たせるなんて出来ないよ」
「……デート慣れしている男の余裕の発言……! くぅ……イケメンはやはり経験豊富か……!」
「茜、考えていることが口に出ているよ」
そんな感じで、ちょっとだけジェイドさんと揉めつつ、結局は私がバスケットを勝ち取った。
こうして、ランプを持った困り顔のジェイドさんと、バスケットを持った私とで、遺跡の中を進んでいった。
遺跡と言っても石造りの建物は頑丈に作られているらしく、足元が崩落しているような場所は、私が通ったところには見られなかった。
外の薄汚れた感じからはわからなかったけれど、白っぽい石で組まれたこの遺跡は、神殿のようなものだったらしい。宗教的な意味合いを感じさせる彫刻や石像ががところどころに遺されていて、偶に石像の目と視線がかちあうとどきりとしてしまう。
遺跡の内部をみていると、ふと既視感を感じて首を傾げた。そして、次の瞬間、既視感の原因に思い至って納得した。
――ジルベルタ王国にある大地の神殿。
ドワーフのゴルディルさんが儀式をした神殿と、どことなく雰囲気が似ているのだ。もしかしたら、ここも精霊関係なのかもしれない。
ひゅう、と冷たい風が遺跡に吹き込んでくる。
日付が変わってから随分と時間が経っている。時間が遅くなるにつれ、かなり空気が冷えこんできた。
しかも、この遺跡はやけに風通しが良かった。風が吹き込む度に、遺跡の天井の隙間からサラサラと砂が内部へと入り込む。壁と壁の隙間から吹き込んでくる風が、甲高い音を奏でて私の頬を撫でていった。
秋の真夜中の冷たい風に、思わず身体がぶるりと震える。
……靴下、重ね履きしてきて良かった。カーディガン、羽織ってきて良かった……!
「寒くないかい?」
「あ、大丈夫です! 暖かくしてきましたから……」
「まったく、無理は駄目だっていったろ?」
反射的に彼に心配をかけまいと平気なふうを装うと、ジェイドさんは私の強がりに直ぐに気がついて、バスケットからひざ掛けを取り出して私の肩へと掛けた。そして、そっと私の肩を抱いた。
風上の方にジェイドさんがいるから、風が遮られてほっとする。
ジェイドさんの持ったランプが、ちらちらと揺れて辺りを照らしている。
暗闇に包まれた遺跡の中を、二人でランプの灯りだけを頼りに進んでいくこの状況は、昔見た冒険ものの映画のヒーローとヒロインみたいだなと、ちょっぴり嬉しくなった。
暫く遺跡の通路を進んでいると、角を曲がった先で、暗闇からいきなり女性の顔が浮かびあがってきた。
「――ひぃっ!」
思わず小さな悲鳴を上げてしまう。けれども直ぐに胸を撫で下ろした。――それは幽霊でもなんでもなく、女性を象った石像だったのだ。
その石像は、半裸の美しい女性。薄衣を身に纏って、角膜が彫られていない瞳を虚空に向けている。そして、頭上に大きく羽を広げた鳥のような生き物を掲げていた。
下半身の一部は崩壊してしまっているけれども、他の石像に比べるとかなり大きいその女性の像は、得も知れぬ迫力があった。
「驚いた?」
「しょ、正直、かなり……。暗闇から急に浮かび上がってくるんですもん」
「あはは、確かにそうだね。何も知らずにこれを見たらちょっと怖いかもね」
「これはなんの像なんですか?」
「これかい? これはね、この湖に沈んでしまった都市の守り神の像だと言われているよ」
「へえ……」
よくよく見ると、その石像の造形は素晴らしいものだった。
まるで生きているのかと見まごう程の躍動感。薄衣に包まれた女性の豊満な肉体、今にも飛び立とうとしているが如く、羽を大きく広げている鳥――……。
私は思わず見惚れてしまって、うっとりと石像を眺めた。
「この頭上に抱えているのが、精霊のシルフを象ったものだそうだよ」
「精霊? まめこみたいな」
「そうだね、まめこは木の精霊ドライアド。このシルフは風の精霊さ」
……シルフ。シルフと言えば、お月見の時の人外たちの宴にも参加していたはずだ。
風がまるで横笛のように綺麗な音を奏でていたのを覚えている。けれども、姿は見なかった。
鳥の石像を見上げる。あの時シルフの姿が見えていたのならば、こんな美しい鳥の姿をしていたのだろうか。
ぼうっと石像を眺めていると、ジェイドさんが私の顔をそっと覗き込んできた。
「……急ごう。時間がないんだ」
「時間?」
「行こう!」
ジェイドさんはそういうと、私の手を引いて遺跡の更に奥へと進んだ。