クエスト達成、と?
村に帰った私達は、さっそくギルドを訪ねた。
まるで初日の時のような、微妙な時間帯のためか建物内には人の姿は少なかった。
しかしカウンターには先客がいて、今日ミアリスさんは居眠りしていなかった。
「あ、レリーフさん」
リージの表情が強張る。
振り向いたレリーフも、表情を強張らせた。
たぶんパーティメンバーに断り、私達の方へ歩み寄る。
ああ、昨日のアイリーフとの件かと気づく。
そう言えば姉妹だったっけと思い出した。
「リージくん」
「レリーフさん…アイリーフの杖のことですか?」
リージは声を固くして、彼女を見上げた。
「三年前とは違います、彼女も冒険者です。謝りませんよ」
「リージくん、違う、」
「違いません、次僕らに杖を向けるなら、今度こそ僕は彼女にナイフを向けることを躊躇いません」
「リージ」
ぽんと頭に手を置いてみる。
「ヒイラギさん?」
「レリーフはリージを責めにきたわけじゃ、ないと思うよ」
レリーフの表情は一見怒りのようにも見える…が、目が…泣きそうな色をしていた。
「落ち着いて」
「ヒイラギさん…」
「ありがと、ヒイラギ。リージくん、ごめんね」
レリーフは深く頭を下げた。
「あの子が、ごめんなさい。三年前のことも…」
泣きだしそうになったリージの表情は、更に固さを増したようだった。
「レリーフさんに謝られても……」
小さく呟いて、腕を引かれる。
「もう、いいです」
それは許しの言葉ではなく、拒絶の言葉だった。
本当に泣き出しそうな表情になったレリーフを、心配そうなパーティのメンバーが促し…レリーフ達は去っていった。
気まずそうなミアリスさんのいるカウンターへと、二人で立つ。
聞きたいことはあるけれど、一先ずは依頼達成報告である。
採取してきた薬草と量を確認して、ミアリスさんも気を取り直したようで笑顔になった。
「はい、依頼達成確認しました。ギルドカードをどうぞ」
カードを出し、二人で一緒に水晶へと触れさせた。
一瞬淡く輝く。
カードの履歴を確認すれば、依頼達成数が3になっていた。
うん、地味に嬉しい。
薬草のことを色々知れたのも嬉しかったし。面白かった。
「あ、あと聖石を量ってもらえますか」
「え、リージくんまた聖石量れるくらい見つけたのっ?」
スゴイと目をキラキラさせたミアリスさんに、二人して顔を見合わせた。
……うん、リアクションが怖いよね。
「でも丁度人、いないしね」
「そうですね」
私はリュックの中から、聖石を取り出した。
小さな生えたての物をザラリと…それだけでもミアリスさんはスゴイスゴイと騒いだが、何というかだんだん声が途切れて…最後にあの聖域から流れてきたらしい大きさを取り出すと、涙目になっていた。
「…………どうしたの?これ」
「河原に流れ着いていて、聖石が生えてました」
「か、河原ってまさか…っ」
「ミアリスさん?」
「神聖石っ」
ミアリスさんはそう呟くと、真っ青になった。
そして慌てて私に返してくる。
「仕舞ってっ、すぐにっ」
「え、これ拾ってきちゃダメでしたか?」
「違うのっ、すぐ教会行って説明受けてっ」
時間との勝負っ!と、泣きながら叫ばれて、私達は慌ててギルドを飛び出した。