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またもや……

投下!

 最近はリバーシと卵焼きの騒動で忙しすぎた。


 リバーシは老若男女娯楽に飢えていた者達、全員がはまり、大会を開いて賭けまでするしまつ。もちろん、一つや二つのリバーシで足りるはずも無く、村の木工師であるエルマンさんは、村人全員に血眼で見張られてリバーシを大量に生産するはめに。製作者の俺も一回だけ説明のためにエルマンさんの家に連れていかれてしまった。


 エルマンさんは通常生産を、後回しにしてリバーシの製作に取りかかっていた。木工師と言うことで、将棋を作って貰いたくて頼もうとしたんだけど、それを言った途端に顔をみるみる青くさせてしまった。


『出すなら! 完成品の数を揃えてから広めてくれ!』と必死の表情で泣きつかれてしまった。


 ごめんね、エルマンさん。

 もう、ローガンとバルトロ、屋敷の人に大体のことは教えたから催促がくるかも。

 エルマンさんの眠れない日々は続きそうだ。


 エルマンさんのおかげでリバーシ大会は、開催された。試合場所はセリアさんの食堂だ。『うちのご飯も酒も売れて、嬉しいかぎりさ、娘もリバーシの大会に出るみたいだからね』とのことだった。


 試合の度にどちらが勝つか、賭けが行われて、最初は雑用、次におかずが一品、そしてお金をかけるようになってしまった。賭けに熱が入ってしまって家計に大打撃をうけてしまった、どうしようもない奴もいた。


 それは例のオッサン(本名はローランド)

 だった。全くどうしようもないオッサンだ。そんなんだからナタリーさんの尻に敷かれてしまうんだ。


 さすがに村の人達も、オッサンのせいで家族が苦しむのは可哀想と思ってくれたのか、軽い雑用と奢りを約束させて、お金は返してもらったそうだ。いい村だなあ。


 ちなみに優勝者はセリアさんの娘のカルラさんだった。セリアさんに似て豪快……さばさばとして大人っぽい感じの髪を後ろ纏めた十二歳の少女だった。


 優勝者は開発者である俺に、挑戦できる謎のシステムのおかげで後日の昼に食堂に呼ばれて対戦させられるはめになった。


 十二歳の自信満々の少女をぼこぼこにするのもためらわれたのだが、こっちも色々と広める立場と、領主の息子として立派なところを見せてやらなければならないのでエリノラ姉さんのように、圧勝したみせた。


 俺の技術と、将来性に盛り上がり、その日の食堂も大にぎわいだった。

 カルラさんは負けても、『やるじゃない、次は負けないよ』だそうで流石セリアさんの娘さんだ。


 卵焼きの方も大盛況。バルトロに教えて、バルトロを派遣することで勘弁させてもらった。四才児の俺の体力では、ご婦人方の相手をするのはつらいのだ。しかし、バルトロには恨まれてしまった。




 そんなこんなで、最近は忙しかったので今日は昼から家でゆっくりしている。ゆっくりと言っても、魔力増量訓練は欠かせないので、朝は土魔法で家を作っていた。


 都会とは違い田舎なら敷地も余っており、夢のマイホームも思いのまま、十LDKとかも余裕だぜ。庭も広いし。何なら森もついてくる。


 最初はただの石の牢屋のように質素だったが、慣れるにつれて部屋のように複雑な作りもできるようになった。


 今度、お気に入りの場所に別荘みたいなの建てちゃおう。


 こんなに今後の予定を考えているのは現在、魔力切れで倦怠感がすごくて動くのがだるいからだ。


「あー……」


 多分今の俺の目は死んでるかも。


「……じー」


「はっ!」


 視線を感じて部屋の扉を見ると、メイドのサーラさんが扉から上半身をだして覗いている。


 慌てて俺は起き上がり、ベッドへと向かう。


 それを確認すると、サーラさんは頷くと扉を音も無く閉めて去っていった。


 ちょっとサーラさん俺のプライバシーは?




 そのまま昼寝をして、暇なのでバルトロの様子を見に厨房へ行く。


 厨房近くのメイドの休憩室もちょうど休憩なのか声が聞こえる。


「かしら? アルフリート様……」


 どうでもいいことならバルトロの所へ直行するのだが、俺の名前が出た以上興味が出る。


「だよねー、だよねー、たまに何ていうか目が死んでるってゆーか、四才の目じゃ無いよねー」


「わかるわかるー、何かくたびれた大人みたいな目をしてるよねー」


 この声は甘いもの大好きの駄メイドのミーナだな。


 もう一人はミーナと仲良し、頼りになる茶髪メイドのメル。


「大丈夫かなー? と思うんですけど魔法も使えるみたいですし、スパゲッティにリバーシに、卵焼きも全部アルフリート様が考えたんですよね!」


「そうそう。本当に四才かは疑わしいんだけど、これからもどんどん良いものを広めて欲しいわね。村も活気がついてきてるし」


「あは、本当ですね!卵焼きと言えば砂糖を使えば、また違った美味しい味がするそうですよ!」


「相変わらず、甘いものに目がないわねー。そんなのどこで聞いたの?」


「厨房でバルトロさんとアルフリート様が料理しているの聞いちゃって」


 メルは呆れた視線を送るが、ミーナはお構いなしで、えへへと表情をだらしなく崩す。


 いつのまに聞いていたんだよ。


 その後はエリノラ姉さんが自警団の隊長から一本とっただとか、リバーシはアルフリート様以外ではシルヴィオ兄さんが強いだとか、話し込んでいた。



 厨房へ行くと、バルトロが卵焼きに何を混ぜるかと試行錯誤している模様。


「ん? おー、坊主か」


 俺はやっぱり何も混ぜない方が好きなんだが、ネギとか紅生姜とかウナギとか混ぜるのも美味しいよね。


「何か混ぜてるの?」


「あー、調味量の方の匙加減はできるようになったんだ。だから今度は何か卵に混ぜこんでみようと思ってな」


「なるほどなるほど」


「何か良いのが思いつくか?」


 ちらりと台所を見ると、トマト、ネギがあった。


 家によって違うけど王道はネギじゃないかな。俺の昔の友達はトマト入れてたな。


「ネギを刻んで混ぜたらどうかな?」


「おー、ネギか!俺もそれがいいんじゃねえかと思ってたんだよ。いっちょ試してみるか」


 腕を捲るとバルトロはネギを洗って、トントンと刻みだす。


「あ、そうだ。ミーナが卵に例の物を混ぜると美味しいって情報を聞いてたみたいだぞ?」


「何だって!本当か!」


 こらこら包丁をこっちに向けない。怖いって。


「本当本当。ねだられないように注意しろよ」


「さらに壺を小分けにして隠しとく!」


 バタバタと床下から壺を取りだし始めるバルトロ。まるでこれから家宅捜査をされる汚職人みたいだ。



「バルトロさーん、卵に砂糖を混ぜると美味しいって本当ですかー? でも、今砂糖って少なくなってきてるので難しい……」


 あ、ミーナだ。


 バルトロはと言うと、床下したから必死に用意した壺に積めた所で止まっている。


「あ……砂糖ですよね?」


「い、いい、いや、これは塩だ! 」


「いつも使う塩と砂糖なら、調理場の小さい壺に置いてますよ?」


 あ、口調が優秀メイドになった。確実にバルトロを追い詰める気だ。


「え? いや、それは」


「少し失礼します」


 ミーナはバルトロの持つ壺から、一摘まみして舐める。一瞬、表情を緩めたがすぐにキリッとした。


「……砂糖です」


「はい」


「他にもありそうですね。探します」


「え、おい! もうない!もうここには無い!」


「ここ以外の場所……自室にもありそうですね」


「あ、あー!」


 あーあ、バルトロのお馬鹿、余計なことを。


 まあ、俺は砂糖を収納してるから大丈夫だけどね。持つべきものは空間魔法だ。


 今日も屋敷は平和だ。


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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
相変わらず個人的に仕入れたものを奪うってやばい事やってんな
[一言] ミーナ実はネギを炒めると甘くなるので 卵に炒めたネギを加えること研究中だよ? 試作出来たら食わせるよ?楽しいにな! 今砂糖の代わりの甘味の研究をアル様と 研究中なんだよ? 無論麦芽糖です! …
[一言] 将棋の大会は起きないのかな~
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