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コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
第9章:ケ号作戦
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ハ号作戦発動!

ボフォース40mm機関砲、砲身重量約522kg。

ブローニングM2 12.7mm銃機関銃、重量38.1kg。

小柄な日本人の遺体を利用した「仏舎利」輸送では運べるサイズで無かった。

どんなにデータを誤魔化そうとも、「武器」と判定されて輸送は出来なかった。

だが、もしも

「この兵器は1943年の世界から持ち込まれた物で、それを20XY年から持ち帰る」

と「門」のセキュリティを錯覚させたなら?

それが「ハ号作戦」の骨子である。


本来は陸海空自衛隊や海上保安庁に配備される銃器であったが、横流しをして

1943年に運べるように手を打った。

40mm砲は現行使用はL70というタイプであり、倉庫からL60を引っ張り出した。

倉庫、そこにあったのは戦後すぐに米軍から供与されたものもあり、資料とされているものもあった。

バレたら、というかいずれバレるであろうが、重大な犯罪と言える。

それだけに40mm砲は4門、M2機関銃は11挺調達したのがやっとであった。


防空機関砲は、砲身だけあっても役に立たない。

砲架、照準器、防盾それぞれが専用の物が必要である。

20XY年であれば、機械制御でレーダーと連動させて有効な射撃が出来る。

だが、そこまでの機械は運搬不可能だ。

レーダーも船舶用や自動車の衝突回避用はあったが、対空の小型のものは

需要が無い為、市販されてはいなかった。

そこで、分解した各部品を「民生用品」と偽って運搬し、

「仏舎利」の中に組み立て設計図を忍ばせて現地で兵器として完成させる。

ハ号計画とは、それら全てを運搬する総合計画であった。


「年代を誤魔化せない、持ち込めない最悪の場合は?」

これに対しては

「砲架、照準器、防盾は持ち込み、砲身だけは別の物で代用しよう」

となっている。

つまり、本物そっくりに偽装し、かつ「性能は及びもしないが、弾丸だけは出る」

ものを載せておけば、「あと1ヶ月なら誤魔化せるんじゃないかな」という

中々無責任なものになっていた。

そこは無責任であるが、武器納入の約束は果たす為、当時作成され現存している

九二式重機関銃(元はヴィッカース7.7mm重機関銃)を、自衛隊の資料館等から

持ち出して渡そうとしていた。

この機関銃は供与武器の候補に挙がっていたが、米海兵隊のF4F、米陸軍のP-38やP-39、

さらにM4中戦車(シャーマン)相手には威力不足と判断し、次点とされた。

次点とは「候補の銃が搬出不可能だった場合の代理」ということだ。

なお、「70年経った代物だが、整備して、撃てるようにしといた」とのこと。

(他にエリコン20mm機関砲も候補に挙がったが、現物が日本に無いので諦めたとのこと)


20XX年10月より行って来た現代日本による戦時中日本への極秘救援計画、

その中の補給計画で、これまでで最大のものと言えた。

俺は、もうそろそろこの計画からは離れ、「最初から無関係でした」

「駐車場とかドライブイン貸しただけで、計画とか何も知りませんでした」

という立場に改変する事になるが、この計画は見ておきたいと思った。

巨大な機関砲が、台車(昭和初期のリアカーを改造したものとか)に乗っていた。


午前3時30分、「門」が開いた。

連絡があちこちに飛んだ。

想定開通時間は1時間10分前後、だから4時40分頃までに輸送を完了しないとならない。

ガ島の司令部にも連絡はいっているが、本日は食事・治療・他の輸送はせず、

この武器搬入に専念することになっていた。


どこのデータベースにアクセスするかは判明した。

なので、運搬直前にハッキングし、金額操作を行う。

金額操作を行ったという連絡が入った。

砲架や光学照準器等が運搬された。

ハッカーから「確かに金額チェックのアクセスを確認」と電話が入る。

一回チェックをしたら、その日の内は同じ品ならば再チェックは行われない。

もっとも、途中で気づかれる心配はある。

とにかく、現在チェックが通った為、急いで搬入を行う。

ハッカーの方はデータを元に戻し、痕跡を消す…。

これで銃や砲を支える物資は現地に送られた。


続いて、「仏舎利」輸送による設計図や、電子機器の搬入がされた。

俺の目は便利なもので、残酷なものは見えないようになっている(笑)。

仏舎利輸送ってのは、「人間ならば生死を問わず3人通過出来る」という

「門」のセキュリティを突破した、「死体を革袋として利用する」罰当たりな方法だ。

俺の脳は「あれは死体」ってのを拒否するようで、目が勝手に他を見る為、

話し声で何をやっているか、何を詰めているかが聞こえるくらいだ。

1943年には無い対空装備が送られるようだ。

ゴルフなんかで使う電子測距装置は、敵までの距離や高度を瞬時に計るのに役立つ。

レーザーポインターは、光学照準を補正し、低空や近距離ならば照準器を覗かずとも、

ポインターが当てながらそこに弾丸をぶち込むという事だった。

あとは、他の銃座からのポインターが当たっているのを確認したら、

重複を避ける為に別な目標を狙うという運用の話もされている。

風船とアルミ箔と小型水素ボンベは、敵のレーダーを攪乱する為に使用するらしい。

また予備のアルミ箔は、ラバウルに運ばれて航空機に積まれるそうだ。


いよいよ本番。

まずは比較的軽量のM2重機関銃からだ。

日本兵2人がかりで持ち、「門」の方に入っていった。

そして


ガシャッ!


音がして、兵士は消えたが機関銃は残っている事が確認された。

失敗だ。

日本兵が戻って来た。

再度機関銃を持って「門」に突入する。

やはり失敗する。

銃だけ洞窟の中に残っていた。

ハ号作戦は肝心なとこで失敗した。


「仕方ない、予備の方に移行する」

その声が聞こえ、別な機関銃に切り替えられそうとした時、ふと俺の脳にある言葉がよぎった。

『セキュリティはローテクな部分から崩される』


今回、刻印や製造番号を誤魔化し、データベースを改ざんし、数値的な部分は調整した。

だがそれは俺の腑に落ちなかった。

肝心の銃が新品同様だったから。

よくサバゲーをやる連中がうちのコンビニに買いに来て、話をするが、

時代物の銃はわざと古めかせたり、汚したり、どっか壊したりして雰囲気を出しているそうだ。

そういうのが必要では????

そう思ったら、意図せず俺は話をしていた。

「すみません、一個試したいことがあるんですけど」

自衛官に研究員に日本兵が俺の方を見る。

「袋に1943年のガ島の土を入れて持って来てくれませんか?

 あと、通信に使う1943年の空気をちょっと分けて貰えませんか?」

言いたいことはすぐに伝わった。

自衛官が補足をした。

「銃を磨く布や油も持って来て下さい」

「水も持って来た方がいいかね? 泥水になるけど」

「泥水の方がいいかもしれない。急いで、お願いします」

現場が動き出した。

「門」から1943年の土やら水なら空気やらが運ばれて来た。

そして銃にぶっかけた。

鉄の鈍い光を放っていた機関銃は、赤茶色の泥に塗れた。

銃口から空気を吹き込んでいた。

「ネジある?」

「これです」

「余分かもしれないけど、取り付けてみる」


「汚し」の作業が終わった。

再度、機関銃が2人の日本兵に担がれた。

「南無三!」

と言ったのは意外にも現代の自衛官の方だった。

兵が「門」に突入する。




通った!!!



最終的に何が理由かは分からないが、1943年塗れになった重機関銃は「門」を通過した。

あちこちで握手していた。

俺も握手を求められた。

「門」から出て来た日本兵が敬礼をして来た。

敬礼を返した途端、いきなり抱き着かれた。

抱き着いて、背中をボンボン叩かれた。


方法は分かった。

残った10挺の機関銃に泥や空気が吹き付けられた。

汚れていく兵器たち。

まずは10挺の機関銃が交代交代で「門」を通って消えていった。

続いてでかい砲身である。

40mm砲は元々戦後すぐに日本に供与されたものなので、その必要は無かった。

L60はそもそも戦前仕様なので、倉庫の物しか無かったからだが。

4台のリアカーに乗せられ、日本兵が前で引っ張り、自衛官が後ろから押した。

3人目の日本兵が、「人に付随する物」という条件を満たす為、砲身に手を添えていた。

リアカーを引っ張っていた日本兵が「門」に入り、消滅した。

自衛官はそのまま押し続ける。

砲身に手を添えていた日本兵が「門」の境界面に触れた瞬間、砲身も共に消えていた。

「こんな感じなんだ。ここまで長い物運搬した事無かったから、

 まだこちらに大部分が存在していたにも関わらず、こんな消え方するんだ」

自衛官や研究者たちが嘆息していた。


まだあと3門ある。

別な日本兵が「門」から出て来た。

何でも、急に巨大な砲が「門」を通って出て来て、それが落ちた時に足をぶつけたりで

負傷した為、交代でやって来たと言う。

ガ島の方では、急に現れる機関砲の砲身対策をするそうだ。

自衛官と日本兵が笑った。

そして、同じように協力して砲身をリアカーに積むと、「門」に向かった。

3回同じ事を繰り返し、作戦は終了した。


「ありがとう」

広瀬三佐がいつの間にか俺の横にいて、握手を求めて来た。

「単純な事に気づかなかった。言われてみれば簡単な事だった。

 第三者の視点って大事なんだって、改めて気づきました。

 本当にありがとうございます。

 それと、今までのご協力にも感謝します」

そう、この作戦終了をもって、俺の勤めるコンビニは作戦の中に組み込まれなくなる。

2月7日までのごく僅かな期間、もしコンビニでないと売ってない買い出し品が、

どうしても必要って時には売る、その程度の関わりになる。

4ヶ月に渡った俺と、うちの店と、ガダルカナル島との繋がりはひと段落する事になった。

(続く)

感想ありがとうございます。

結局、武器は何を基準に判定していたかは謎のままとします。

やれる事全部やって、どうにか通した、と。

で、その最後の「やれる事」に「俺」氏を絡ませました。

「俺」氏はほとんど活躍してない、狂言回しの役割でしたが、ほぼこの後は脇役になります。

コンビニも役割終了って感じです。

こっから後はただの「改変された歴史のガ島撤退作戦」です。

タイトルに偽り有になってしまいました…。

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