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第二十九話 白状

 ここは王城の応接室だ。

 テーブルを囲んでレックス国王を筆頭に、エリック公爵、マグナ宰相、ダイム副騎士団長、ガルム辺境伯が座っている。


「それで、ダイムよ。この間のティファーナ騎士団長とカインの戦いはどうだったのだ」


 最初にレックス国王が口を開き、ダイムに尋ねる。


「はっ。団長は途中までは身体強化のみで戦っておりましたが、途中から得意の風を纏い、さらに早い剣技を振るっておりましたが、それでもカイン殿は余裕で捌いておりました」


 レックス国王はため息をつく。


「五歳にしてこのクラス……そこまでの強さを持っているのか。この先どうなるかわからんな。――ガルム、おぬしの子供じゃ、どうなんだ?」


「こっそりと部屋から抜け出し、魔物の森へ狩りに行っていたようです。屋敷のホールに置いたあのレッドドラゴンも一人で倒したらしく、あれを見たときには私もさすがに腰を抜かしそうになりました」


 全員が頷く。


「あれはSS級の魔物じゃ、それを一人で倒すとはとんでもない子供じゃな」


 レックス国王も同じ気持ちのようだ。



 ダイムは思い出したように話始める。


「そういえば、私がカイン殿にあなたは勇者か神の使徒ではないか? と聞いた時に体が反応しておりました」



「「「なにっ!!!!」」」



 全員が驚く。


「ま、まさか勇者か使徒様なのかもしれないのか」


「先日、カインにステータスを見せるよう言ったのですが、断られました。何かあるのかもしれません」


 ガルムも思い出したように言う。


「試すことはできます。『アレ』を見せてみれば」


 マグナ宰相が話し始める。


「『あれ』か……。見せることで勇者かどうかはわかるかもしれないな」


 レックス国王も頷く。


「すぐにカインを呼んで参れ、わしは『アレ』を用意する」





 ◇◇◇



 いつもの応接室にレックス国王を筆頭にエリック公爵、マグナ宰相、ガルム辺境伯、ダイム副騎士団長が座る。真ん中にはカインが座っている。


「陛下、お呼びにより参上いたしました。父上までお揃いですが、本日はいかがされましたか。グラスの件でしたらまだ出来ておりませんので、もう少々お待ちいただけたらと」


 カインは、ここ最近よく目にする国の錚々たる面々に臆することもなく、囲まれているこの状況にも慣れてきていた。


「カイン、ちょっと見てもらいたいものがあるのだ。マグナ出してくれ」


 大事に包装されたものを取り出す、そして開いて出てきたものは一冊の本だった。

 表紙には『帝級魔法書(・・・・・)』と書いてあった。


「これは王家に伝わる帝級魔法書じゃ。初代様が書いたとされ、代々大切に保管しておるのじゃ」


 陛下が説明をしてくれた。


「帝級の魔法書ですか!? これを見せてもらえるのですか」


 宮廷魔術師の書庫を見ても、超級までしか魔法書はなかった。

 初めてさらに上の帝級の本が、目の前に置かれているのだ、興味がないはずがない。


「うむ、カインよ、見ていいぞ」


 そう言って本を差し出してくる。

 ページをめくっていくと、帝級の魔法の名前や効果などが書いてあった。日本語(・・・)で。

 新しい魔法の本ということで、カインは忘れていた。日本語で書かれているので普通に読めていることがおかしいということに。


「――やはりそうか……」


 レックス国王が呟く。他の皆は沈黙だ。

 カインは本を読んでいた顔を上げ、陛下を見て首を傾げる。


「カインよ、その本はな、私たちでは読めんのだ。なぜだかわかるか?」


 カインは改めて本を見てみる。

 たしかに書いてあることが読めるのは確かだ、書いてあるのが日本語(・・・)なのだから。



 「あっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 カインがわかったようだった。

 そのまま、椅子から崩れ落ち床に手をついている。


「カインよ、まず座れ。それは初代国王が残してくれた書物じゃ。『にほんご』で書かれており「帝級魔法書」だとは言い伝えで知っているが中身は誰も読めない」


 カインは諦めた顔をして椅子に座り直す。


「カイン、改めて問う。おぬしは何者じゃ?」


 陛下はまっすぐな視線でカインを見つめる。ガルムもだ。


「――わかりました……正直に話します。ただし、今はここにいる人たちだけの話にしていただけますか」


 カインは諦めたように答えた。

 皆が頷く。


「私はガルムの子で間違いありません。それは確かです。但し、前世の記憶を持っています。しかも違う世界の。その違う世界とは――初代国王と同じ国でした。その国の名前が『にほん』です」




「「「「……」」」」


 少しの沈黙がこの場を支配する。


「やはり普通の五歳ではないと思っていたが、初代様と同じ国にいた記憶とはな」

 

 陛下は納得する。


「ほ、ほんとうに私とサラの子供なのか? 間違いないのか」


 ガルムが心配そうに聞いてくる。


「はい、間違いありません。生命神ライム様から五歳の洗礼時に聞いております」



「「「「神と会ったのかっ!?」」」」



 全員が驚く。普通神に会えるわけではないのだ。教会でも聖女クラスが神託を受けることはあるが直接会うことはない。


 またやっちまったと後悔しながらもカインは説明する。


「……はい。洗礼時と教会の礼拝の時に。七神ともお会いいたしました」


 ほとんどバレてしまっているので正直にカインは話す。


「七神様全てか……。おぬしがガルムにステータスを見せられないと言ってたのはそのせいか?」


 陛下が聞いてくる。


「はい、その影響もあります。称号、能力、加護を含め見せられなかったからです」


「では改めて見せてもらってもよいか?もちろんここだけの話にする」


「……はい」


 カインは諦めたように魔法を唱える。


『ステータスオープン』


『ステータス』

 【名前】カイン・フォン・シルフォード

 【種族】人間族 【性別】男性 【年齢】五歳

 【称号】辺境伯家三男 転生者 神の使徒 魔物の森の天敵 自然破壊者 竜殺し 神々の寵愛を受けし者

 【レベル】298

 【体力】5,857,240/5,857,240

 【魔力】102,643,240/102,643,240

 【能力】SSS

  ー筋力 SSS

  ー体力 SSS

  ー知力 SSS

  ー敏速 SSS

  ー魔法行使力 SSS


 【魔法】

  創造魔法Lv.10

  火魔法Lv.10

  風魔法Lv.10

  水魔法Lv.10

  土魔法Lv.10

  光魔法Lv.10

  闇魔法Lv.10

  時空魔法Lv.10

  生活魔法

  複合魔法

 

 【スキル】

  鑑定Lv.10

  アイテムボックスLv.10

  武術Lv.10

  体術Lv.10

  物理耐性Lv.10

  魔法耐性Lv.10


 【加護】

  創造神の加護Lv.10

  生命神の加護Lv.10

  魔法神の加護Lv.10

  大地神の加護Lv.10

  武神の加護Lv.10

  技能神の加護Lv.10

  商業神の加護Lv.10



「「「「……」」」」



 ステータスを見た皆は絶句した。誰も言葉を発することなく時間が過ぎていく。

 数分が過ぎて最初に動いたのはレックス国王だった。


「ま、まさか神の加護にレベル5以上が存在していたとは。カインよ、その書いてあることは本当なのか?そうなればこの国の全て、いや、全世界の民がおぬしに膝をつかないといけん。もちろん王としてのわしもじゃ。神の使徒様といえば誰よりも高い位なのじゃ」


 レックス国王が力なく言う。


「陛下、できれば今まで通りでお願いします。私はガルムの息子であり、ただの五歳です」

 

 カインとしてもできれば今のままの関係がよかったのだ。


「……わかった、感謝する。おぬしが規格外のことをやらかす理由が、これでわかった気がするよ」


 納得したレックス国王であった。


「これから先、何かがあった時にこの国を助けてもらえるか?」


 レックス国王はまっすぐにカインを見つめた。


「私はエスフォート王国の男爵です。この国は好きですし、テレスティア王女殿下もシルク嬢も家族もいるので守るつもりです。間違えは正す必要がありますが」


 カインは正直に答える。

 レックス国王は安心したようにため息をつく。


「本来なら公爵に陞爵するべきだが、このことは秘密だからの。一足飛びに上げてしまうといらぬ疑いが掛かってしまう。今後は時期を見て少しずつ陞爵していくことにするから、そのつもりでおれ。男爵程度でいると口うるさいやつもいるでのぉ」


 カインの中ではコルジーノ侯爵が思い浮かび苦笑いをする。


「今日のことを口外することは許さん。家族を含め、誰であろうとだ。皆、わかったな」


 レックス国王の厳命に全員が臣下の礼を取る。


「ステータスを見せられないと言われたときは悲しかったが、このステータスを見れば納得できる。カイン悪かったな」


 ガルムも笑顔でこちらを見てくる。



 

 カインの秘密が五歳にしてバレた日だった。


いつもご愛読ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
カインの子供が生まれたら加護は無理でもステータス関連は引き継ぎそうですね。 仮に半分だけとしても超人クラスになりそう。 青年編まであるのかな?楽しみです。
[一言] よいどれさん>「可笑しい」は面白い、笑えると言う場合に使われる漢字ですので、 辻褄が合わない、怪しいといった意味である 「普通によめているのがおかしい」にその漢字を当てるのは誤用です。 因み…
[一言] 権力者の当然の素養としてこう、言う人外の存在は情で縛り身内にするよね!ある意味美しい王女は彼らを縛る鎖だが、 王が馬鹿だと奴隷にして自身の武器に使用とした時にその力は自身の権力構造に振るわれ…
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