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第二十一話 王都お披露目会2

 カインは子供たちのグループに歩いて行った。

 親同伴の挨拶周りは終わり、ほとんどのこども達はそこに集まっている。


 そのグループの後ろのほうで、子供達の会話を聞いている。

 テレスは王たちと一緒にいるので、のんびりと待っていたらシルクがきた。


「カイン様、お一人なの? テレスはあっちにいるし一緒にお話しよっ」


 そう言って、ジュースを持ってきてくれる。グラスを受け取り近くの椅子に座って二人で話す。


「思ったより人が多くてびっくりしたよ。テレスのとこで話してるわけにもいかないからカイン様がいてくれてよかった」


「シルク、そろそろカイン様はやめようよ。様はいらないよ」


「んー。ならカインくんで!カイン男爵って呼んだほうがいい?」


「いやいや、カインくんのほうがいいです」


 楽しく二人で話していると、三人ほど近くに寄ってきた。


「これは、シルク嬢、ご機嫌うるわしく。本日も素敵なドレスですね」


「ハビット様、こんばんは。ありがとう」


 素っ気ない態度で、シルクも挨拶を返す。


 そして、またカインと話始める。カインもいいのかなって思いつつも話続ける。

 後ろについてきた取り巻きが声を掛けてきた。


「そこのお前。コルジーノ侯爵の嫡男ハビット様がきているんだ。挨拶くらいできないのか? しかもシルク嬢に話しかけているのに邪魔するとは」


 あの謁見の時に睨みつけてきた侯爵の息子とその取り巻きか。


「はい。こんばんは、ハビット殿、初めましてですね、カイン男爵です」


 あえて、家名を名乗らなかった。

 だってちょっと生意気なんだもん。

 反省はしてない。黒い笑みがでる。

 

 そしてその取り巻きが見事に引っかかってきた。


「男爵の息子風情が、侯爵様の嫡男のハビット様に向かって「殿」付けとはどうなんだ? 様をつけないか様を!!」


 もう一人の取り巻きも同じく釣れた。


「そうだ、僕ら二人も子爵の息子だ。男爵の息子なら僕らにも様付けをしろ」

 

 シルク嬢は、この人たちなに言っているんだろうって顔をしている。


「二人とも待て、カインとやら姓を名乗れないほど貧乏男爵であろう、今謝ってくれれば二人のことを僕が抑える。シルク嬢も心配しているからな」


 チラチラとシルク嬢を見ながら答えてる。

 シルクに格好いいとこを見せたいようだ。


「ちょっと、カインくんは男爵のむすこじゃな――」

「ちょっと待って」

「え?」


 シルクがバラそうとしたところを、カインが止めた。


「すいません。侯爵の息子様、子爵の息子様、改めて名乗りますね」


 「息子様」という言葉に、三人とも怒りを覚えた。

 一人が胸ぐらを掴もうとする。


「ガルム・フォン・シルフォード・グラシア辺境伯の息子、カイン・フォン・シルフォード男爵です。男爵の息子ではなく僕が男爵です」


 ニコっと笑顔で答えた。

 その言葉に、三人が止まった。


 いくら男爵でも叙爵されて独立した貴族である。付き合いの関係で、上級貴族の息子のほうが上位だと思われるが、上級貴族の息子より叙爵された貴族のほうが上位なのである。

 しかもガルム辺境伯は、コルジーノ侯爵と同じ派閥でもない。辺境伯と侯爵は職務が違うだけで同等である。

 その男爵に対して、散々失礼な対応をしたことに、三人とも焦りを覚える。


「カイン様は、この間私とテレスティア王女殿下の馬車がオークの群れに襲われた時に、一人で三十匹も倒して私たちを助けてくれたの。それで先日、男爵に叙爵されたのよ」


 シルクがなぜか胸を張り答えている。


「……僕も親にそのことを聞いた。剣も魔法も一流で一人でオークの群れを殲滅したと。そして僕たちと同じ年で叙爵された子がいると」

 

 取り巻きの一人が話始めた。

 その言葉を聞いて、ハビットと取り巻きが震えている。

 一歩一歩下がっていく。


「し、し、失礼しました。僕たちは用事がありますのでこれで失礼します」

 ハビットがそのまま逃げていった。

 取り巻きも一緒に逃げていく。


 カインは席について、一息つく。


「それにしてもカインくんって、結構黒いのね。初めて知った。笑顔が悪いこと考えてるってすぐにわかったもん」


 シルクが目に涙を貯めて笑ってる。

 思わずやってしまったと思った。


「こ、こ、これは……」


 動揺するカイン。そして微笑むシルク。


「今度、テレスにも話しちゃおうっと」


 さらに動揺する。


「なんてね! 今度デートしてくれたら黙っててあげる」


 勝てないとさっそく悟ってしまった。


「……うん。是非に」


 なんか負けた気がする。


「やった! じゃぁ父様にあとで言っておくね!」


 レイネには勝てるのに、どうしてもシルクとテレスには勝てる気がしなかった。

 そのまま話していると、テレスが来た。


「やっと開放されました。カイン様はずっとシルクと話してましたね! 楽しそうでいいですね」 

 

 ちょっと拗ねているテレスも可愛い。


「そういえばねぇ~さっきね、カインくんがくろ――」

「ちょっとまった」


 カインはシルクの口を抑えた。片手でシルクの口を抑え、片手で自分の指一本を口にあててシーっとやっている。


「カイン様、未婚の女性の唇を触るなんて……。これは公爵様に報告が必要ですね」


 テレスがニコニコしながら答える。目は笑っていないが。


「あっ。ごめん」


 シルクの口から手を離す。


「カイン様、正直に言ってください。シルク、なにがあったの?」


 心配そうにするテレスだった。


「ん? なんでもないよ。カインくんと今度デートするって話」


 あっさりばらすシルク。もうちょっと隠しててほしかった。


「デ、デ、デートですって! シルクずるいっ! それにいつのまにか「様」から「くん」で呼んでるし!ずるいですわ。私もカイン様とデートしたいです」


 顔を赤くしてテレスが答えてくる。


「わかりました。テレス、今度デートしよう」


 カインがそう言うと、テレスが耳まで赤くしている。


「絶対行きますわ。楽しみにしてます」


 その時後ろから声がかかる。


「何に行くんだ?」

 

 その声にそのままテレスが返す。


「もちろんカイン様とデートですわ」


 振り向きながらテレスが言う。そして固まった。

 そこには陛下がいた。

 にこやかな笑顔だが、目は笑っていない。

 これはまずい。


「ふむ。カインよ。テレスのことでも、別室でじっくり話す必要がありそうだな。そろそろお披露目会も終わる。さっきの遊戯も話もあるし、男同士心行くまで話そうではないか」


 そう言って、背中を叩いてくる。ちょっと痛い。普通の子供なら泣いてるぞ。


「……はい、陛下、わかりました」


 力なく頷くしかなかった。


 お披露目会も終わり、今はいつもの応接室だ。集まっているのは陛下、王妃、テレスティア、宰相、エリック公爵、シルク、ガルムにカインの八人だ。


 持っているリバーシをあと三組だした。王家献上用は一つしか作らなかったので、これは貴族用のだ。一般向けより豪華に出来ている。説明は簡単だ。順番に置いていくだけだし。

 教えながら数回対戦した。


「これは面白い! ルールは簡単だし、考える必要がある。子供から大人まで楽しめるな!」


 陛下も大喜びだ。もちろん他の皆もだ。

 

「一般向けには銀貨一枚で買えるようにしてあります。貴族用でも大銀貨一枚で買えるかと」


「うむ、それくらいなら問題ないな。それにしてもカインは商売もできるのか。自分で商会を立ち上げてみるのもいいかもな」


 その手があったか。まだ五歳だからそのうち考えてみるかな。

 その後も、リバーシに散々付き合った。どれくらい付き合ったかわからない位だ。

 そしてやっと帰れることになった。


「では、陛下、それでは失礼いたします」


 頭を下げて、ガルムと退出しようとする。


「ちょっと待て。そういえば、うちのテレスとデートに行くって言ってたな。どういうことだ? そこに座って説明してみろ」


 陛下のその言葉で固まった。


「そういえば、カインくん。うちのシルクともデートの約束をしたみたいだねー。婚約するとは決まってるけどまだ内密で動いてるから気をつけるようにね」


 さらにエリック公爵が爆弾を落としてきた。



 その後、陛下と公爵から散々責められたカインは、疲れ果てながら帰宅した。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 男友達も作って欲しかったな 最初に話しかけてきたときに自己紹介くらいすりゃいいのに それでも生意気な態度取ってきたなら仲良くする必要ないけど
[気になる点] 親を心の中で呼び捨て 心情としては親を親として認めてないから、呼び捨てにしてるのかな
[一言] リバーシセット一般向けが銀貨1枚(約1万円)というのは、正直、高いよね、特に普及を目指すと言うのなら・・・ 中世ヨーロッパが世界観のモデルのようだし、一般家庭の月収は銀貨5枚(約5万円)くら…
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