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禁欲攻撃


 色魔のスキル検証は、どのように行うか考えた結果、まずは使ってみることから始めた。

 精力増強の効果を確かめるために、精力を浪費する作業にいそしむ。

 最初に色魔なしでロクサーヌとセリーを相手に一回ずつ試した。

 続いて色魔をつけて一回ずつ試す。


 結果。

 どちらも美味しくいただけました。


 駄目じゃん。

 いや。四回戦くらいではまだまだ余裕だったので、精力は増強されているに違いないが。


 つけたときとつけなかったときの違いは、よく分からない。

 精力増強の効果が厳密にどんなものかも、よく分からない。

 まだまだ余裕なので、限界も分からない。


 これは検証に失敗したと考えるべきだろうか。

 初日だからこんなものだろうか。


 考えてみれば、色魔をつけなかった場合に限界まで行ったこともなかった。

 精力増強の効果を確認するなら、色魔をつけた場合とつけなかった場合とで限界までチャレンジするのがいいだろうが、そこまでして検証したくない。

 というか、限界までいったら俺が壊れる。


 ロクサーヌとセリーも、二人で話すこともなく寝てしまった。

 多少負担になったようだ。

 その面からも、精力増強の効果を検証することは大変だろう。


 朝はいつもどおりロクサーヌに抱きついた状態で目を覚ます。

 色魔をつけたまま眠ったが、無駄弾は撃たなかったようだ。


 安心してロクサーヌの上にのしかかった。

 そのまま麗しの身体を組み伏せる。

 欲望の対象となる柔らかな肉体を。


 はっ。

 いかんいかん。

 何をやっているのだ。

 鉄の理性を発揮して、思いとどまった。


 スキル禁欲攻撃の確認もしなければならない。

 もちろん、十日どころか二日や三日も禁欲できるとは考えていない。

 しかし、半日ならばどうか。

 一日ならばどうか。


 夕方まで我慢できれば、二十時間くらいの禁欲にはなる。

 二十時間の禁欲でどの程度の威力が出るか、一度試してみるべきだろう。

 最悪でも、朝まで禁欲した場合の威力を確認したい。

 今暴発するわけにはいかない。


 弾力のある柔らかなロクサーヌの身体から降りた。

 ロクサーヌにはひっついたまま、回転する。

 これを放すなんてとんでもない。


 横に並ぶと、ロクサーヌからキスをしてきてくれた。

 その口に吸いつく。


 思いっきり吸いつく。

 あらん限りの力で吸いつく。

 まるで初めてのキスのように、吸いつく。

 舌を入れ、絡ませあい、温かなしなやかさをむさぼった。


「ん……んんっ」


 ロクサーヌがうめくのが最高のご褒美だ。

 力強く抱きしめる。

 柔肌のなめらかさも味わい、弾力を楽しんだ。

 俺の胸板とロクサーヌの間で、豊かなゴムまりが弾む。


 このゴムまりに出会えてよかった。

 ゴムまりに出会えてうれしい俺の体の一部がホットホット。


 ホット、ホット。


 い、いかん。

 そうじゃない。

 鋼鉄の理性を発揮して、思いとどまる。


 スキルの検証だ。

 この後で禁欲攻撃をしなければならない。


 しかし、かろうじて思いとどまったものの、キスはしたままである。

 ロクサーヌの舌が動いて、なめらかな感触を与えてくれた。

 優しく、柔軟で、とろけそうな味わいだ。

 こ、このままでは鋼鉄の理性が溶けていく。


「お、おはよう」

「……お、おはようございます、ご主人様」


 なんとか離脱した。

 最大理性を発揮して、肩で息をする。

 ロクサーヌを放すにはオリハルコンの理性が必要のようだ。

 胸部に押しつけられていた弾力豊かな圧力が離れていった。


 ようやく一息入れようとした俺の首に後ろから手が回される。

 しまった。まだセリーが。

 か、紙の理性が。


「おはよう」

「お、おはようございます」


 さすがオリハルコンだ。なんともないぜ。

 肩で息をしながら、セリーを解放する。

 セリーの方も息を切らしていた。

 強く吸いすぎただろうか。


「二人とも悪いな。しばらく間が空いたので、昨夜からこっち、抑えが利かなくなった」

「いえ。あの。私としてもうれしいですから」

「私もうれしいです」


 うれしいことを言ってくれるから、飛びつきそうになったじゃないか。

 理性を発揮して思いとどまる。


 理性を発揮して起き上がった。

 理性を発揮して服を着る。

 理性を発揮して革の靴と革の鎧を装備した。

 心を強く持て。


 クーラタルの迷宮に移動し、アイテムボックスから出した防具を配る。


「昨日作ってもらった防水の皮ミトンはセリーがつけろ」

「よろしいのですか?」

「現状ニードルウッドが魔法を連発してくることはないからな。俺なら一、二発は問題なく耐えられる。ロクサーヌなら回避するだろうし。防水の皮ミトンはセリーが着けておくのが今はもっとも効果がある」

「ありがとうございます」


 ただし、錬金術師をつけていないので、メッキはなしだ。

 その分をある程度相殺してくれるだろう。

 あれもこれもというわけにはいかない。



加賀道夫 男 17歳

探索者Lv34 英雄Lv31 魔法使いLv33 僧侶Lv32 色魔Lv2

装備 ワンド 革の帽子 革の鎧 革のグローブ 革の靴 ミサンガ


ロクサーヌ ♀ 16歳

獣戦士Lv21

装備 シミター 木の盾 革の帽子 皮のジャケット 革のグローブ 革の靴


セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv14

装備 棍棒 革の帽子 皮のジャケット 防水の皮ミトン 革の靴



 ロクサーヌの先導で迷宮を進んだ。

 迷宮は戦場だ。

 気を抜いてはいけない。

 前を行くロクサーヌのお尻が可愛い。


 このお尻を後ろからパンパンと。

 そのたびに尻尾が揺れて。

 いや、違う。

 ここは迷宮だ。


 迷宮の中で気を緩めることはできない。

 油断せず、周囲の状況に気を配る。

 そんなセリーの顔も素敵だ。

 なめ回したい。


 迷宮では何が起こるか分からない。

 注意をしっかり保つことが肝要である。

 気をつけて注視すると、皮のジャケットを着けていてもやはりロクサーヌの胸は揺れている。

 これはすごい。


 ここは戦場だ。

 気の休まるひまがない。

 早く終えて家に帰りたい。

 帰ったらベッドで。


 違う。

 迷宮だ。

 戦場なのだ。


「きました」


 ロクサーヌが告げた。

 ロクサーヌは声も可愛い。

 ベッドの中で出す声も可憐だ。


 早く聞きたい。

 今すぐ聞きたい。

 何度でも聞きたい。


 ええい。

 邪魔者は死ね。

 魔法五発で焼き払った。


「はい」


 セリーからブランチを受け取る。

 拾ってくれるセリーも可愛い。

 迷宮でなければ、この場で押し倒したい。


 そう。ここは迷宮だ。

 気を抜くことなど許されない。

 常に気を張って、周囲の状況を確認する。

 あ、またロクサーヌの胸が揺れた。


 迷宮では緊張感を持たなければならない。

 常在戦場の心意気だ。

 ベッドでも、ロクサーヌとセリーの二人を相手に戦う覚悟である。


 そう。ここは戦場だ。

 男子高校生が暇な授業中に考えているようなエロい思考など入り込む余地はない。


 とはいえ、夕方までは長い。

 そうだ。今日は風呂を入れよう。

 我慢した分、お風呂でたっぷりと。

 ロクサーヌにあんなことや、セリーにこんなことを。


 早くしろ。間に合わなくなっても知らんぞ。

 夕方まで長い。

 長すぎる。

 これからが本当の地獄だ。



「ふーっ」


 水がめのお湯を風呂桶に入れて、一息ついた。

 なんか疲れた。

 MPが減った感がある。

 お湯もだいぶたまったので、あと一回迷宮に行けば大丈夫だろう。


 長かった禁欲もここまでか。

 次に迷宮へ入るのが、今日最後の迷宮行きとなるだろう。

 だから次で禁欲攻撃を使う。

 後はもう性欲を溜める必要はない。


 迷宮ではそれなりに気も張っているし、動き回ることもあって、禁欲は一概に必ずしもあながち無理というほど苦ではなかった。

 色魔の精力増強といっても、たいしたことはないようだ。

 戦場にいるという緊張感がそうさせたのだろう。


 さすがに迷宮では色魔をつけていても性欲に惑わされることはない。

 ほぼ通常運行だった。

 ちらっと変なことを考えたりもしたが、ごくまれにだ。

 まあいつもこんなものだっただろう。


「迷宮に行かれますか」


 風呂場から出て一階に下りると、キッチンのロクサーヌが声をかけてくる。

 可愛い。

 押し倒したい。

 しかしここまで我慢して棒に振るわけにはいかない。


「頼む」

「私は火を見ていますね」


 料理の番をするセリーを置いて、ベイルの迷宮八階層に飛んだ。

 ロクサーヌの案内にしたがって迷宮の中を進む。


「いました」


 コラーゲンコーラル三匹にエスケープゴート一匹だ。

 ちょうどいい。

 今宵のデュランダルは血に飢えている。


「ロクサーヌは右のコラーゲンコーラル二匹を。エスケープゴートは俺がやる」


 デュランダルを振り上げ、駆け寄った。

 エスケープゴートに狙いを定める。


 通常、エスケープゴートLv8はデュランダル一発で逃げ始める。

 つまり、この一撃で逃げ出さなかったら通常攻撃よりも弱い威力、一撃で逃げ出したら通常攻撃と同等以上の威力だ。

 ぎりぎりまで我慢したときの禁欲攻撃の威力を検証できる。


 魔物が間合いに入った。

 禁欲攻撃と念じ、デュランダルを振り下ろす。

 力強い斬撃がエスケープゴートに叩きつけられた。


 パワフルなスイングだ。

 最初に禁欲攻撃を使ったときのひょろひょろとした振りとはわけが違う。


 デュランダルを浴び、魔物が倒れた。

 一撃だ。

 一撃ということは、普段デュランダルでエスケープゴートを処理するときにラッシュを使っているのと変わらない。

 一日近く禁欲したときの禁欲攻撃の威力は、通常攻撃の倍以上あるということだろう。


 すぐに残った魔物の反撃が始まる。

 コラーゲンコーラルが体当たりをしかけてきた。

 ロクサーヌが一匹からの攻撃を木の盾でいなし、一匹を回避する。


 デュランダルを振り下ろしたばかりの俺は体当たりを喰らってしまった。

 お返しとばかりにコラーゲンコーラルを斬りつける。


 魔物の攻撃はやまない。

 ロクサーヌが体当たりを回避しながらシミターを浴びせた。

 俺もなんとか正面のコラーゲンコーラルの攻撃を避ける。


 と、さっきはロクサーヌに向かっていた一匹が今度は俺に飛びかかった。

 横目で見えてはいたのだが、対応できずに喰らってしまう。

 よろめいたところに、正面から一撃。


 お返しにデュランダルを叩きつけた。

 二発めを喰らった魔物が倒れる。


 横を向いてコラーゲンコーラルに対峙した。

 攻撃をかわし……切れずに浴びてしまう。

 よろめくのを踏みとどまって一撃。

 もう一撃加えて、魔物を屠った。


 最後の一匹はロクサーヌが相手をしている。

 ロクサーヌは体当たりをかわし、シミターを浴びせ、次の攻撃を軽くいなした。

 そのコラーゲンコーラルに横から斬りつける。


 魔物が再度ロクサーヌに飛びかかった。

 ロクサーヌが木の盾でいなす。

 弾き返されて着地したところを、デュランダルで袈裟懸けにした。

 コラーゲンコーラルが倒れ、煙となる。


「お疲れ様です」

「お疲れ。ロクサーヌは攻撃を受けてないな」

「はい。問題ありません」


 コラーゲンコーラルごときの攻撃は問題外というところか。

 俺は何発喰らったんだろう。

 数えたくもない。


 ただし、受けた傷はその都度デュランダルのHP吸収で回復している。

 いざとなれば八階層なら一人で走破することも可能だろう。


 問題は、攻撃を浴びれば痛いということだな。

 痛いのはやはり嫌だ。

 できればやりたくない。


「じゃあ帰るか」


 まあそのときはそのときだ。

 俺はワープで家に帰った。


 禁欲攻撃を行ったせいか、気持ちが落ち着いている。


 溜まりに溜まった衝動がなくなったからだろう。

 すっきりと晴れ上がった気分だ。


 さっきまでのもやもやが嘘のように何もない。

 悟りを開いたかのように心が平静になっていた。

 まさに平穏無事。

 性欲に動じない不動心の境地に近いだろう。


 今なら巫女のジョブも獲得できそうだ。

 男だから巫女じゃないのか。

 本当に得ていないかと思って、確認してしまった。

 もちろん獲得してなどいなかったが。


 夕食を取り、風呂に入っても、割と平静だ。

 ロクサーヌの身体を隅々まで洗ったが平静だ。

 今日一日分の思いを込めてゴムまりの弾力を味わったが、平静だ。

 セリーの身体も細部に至るまで漏らすことなく洗ったが、平静だ。


 一緒のお湯につかっても抱きつくくらいですんだ。

 完全に平静といっていいだろう。

 いや、抱きついてキスしてほおずりしてなで回すくらいのことはしたが、平静といっていいだろう。

 ロクサーヌとセリーを両側にはべらせ、同時に抱きかかえたり交互に胸の弾力を楽しんだりかわりばんこにキスしたりしたが、平静といっていいだろう。


 その後、ベッドに入っても二回ずつしか堪能しなかったのだから、十分に平静といっていい。

 一日色魔をつけっぱなしだったのに昨夜と同じ回数ですんだのだ。

 落ち着いているというべきだろう。


 これが禁欲攻撃というものか。

 ラッシュより威力があるかどうかは確認してみなければならないが、それなりには使える。

 もちろん、十日も禁欲すればえらいことになる。

 デュランダルを使えば、八階層レベルならボスを一撃できるに違いない。


 しかし十日はきつい。

 二日でもきつい。

 多分、夜を越えることはできないだろう。

 ロクサーヌやセリーと一緒に寝る以上は。

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[一言] とことんクズ野郎だな
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