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幕間 アインホルン級二番艦 リコルヌ

現在五章は序盤を書いている途中です。


10月には更新する予定です。


 アルゼル共和国の領空。


 アインホルン級二番艦リコルヌの甲板から、アンジェとリビアは聖樹を見ていた。


「噂には聞いていたが、実際に見ると大きいな。これが聖樹か」


「本で読みましたけど、挿絵は誇張されていると思ったのに実物の方が凄いなんて」


 それぞれ、聖樹に対して感想を口にしている。


 白い船体のリコルヌは、アインホルンと同様に一本角が船首にある。


 その形はアインホルンと同じで色違いだ。


 周囲には同じ工場で生産された飛行船が並んでいる。


 バルトファルト家の工場で建造されたので似ていた。


 二人の側に控えているのは、アンジェやリビアの世話をするメイドのまとめ役。


 眼鏡をかけた黒髪の女性は、身を乗り出したアンジェに注意をする。


「アンジェリカ様、はしたないですよ」


「許せ。もうすぐリオンに会えると思うと嬉しくてはしゃいでしまった」


 久しぶりにリオンと会える。


 アンジェもリビアも楽しみだった。


 リビアは風で乱れる髪を手で押さえながら、


「意外と到着は早かったですね。結構近いんですね」


 そんな感想を抱いた。


 アンジェがリビアの感想を訂正する。


「速度が出る飛行船を揃えたからな。それにしても、リコルヌは凄いな。揺れも少ない上に船内の生活も快適だった。さすがにパルトナーには劣るが」


 その言葉に反論するのは、二人の側で転がっていたクレアーレだった。


『ちょっと酷くない?』


 クレアーレは二人の視線の高さまで浮かび上がった。


『小型化、高性能化を目指したのよ。パルトナーにだって負けないんだから。それに、二番艦だから、一番艦よりも性能は向上しているわ』


 クレアーレの言葉にアンジェが謝罪をする。


「分かったからそんなに近付くな」


 リビアがリコルヌの外装を見ながら、


「リオンさんのアインホルンと同型ですよね? 結構な値段がするんじゃないですか?」


 すると、クレアーレが自慢げに説明する。


『特注品よ。同じものを用意しろ、って言われても無理ね。マスターの命令がなければ作れないわ。まぁ、この子はあのひねくれ者が残したアインホルンの予備パーツを使って勝手に建造したけどね』


 リオンやルクシオンが聞けば怒るだろうが、アンジェやリビアのためだと言えば乗り切れるとクレアーレは計算していた。


 クレアーレが一つ目を真上に向けた。


『それよりも共和国の飛行船が近付いているわ。真上から来るなんて失礼しちゃうわね』


 アンジェが鋭い目つきで真上を見た。


「共和国の臨検か。やり方が横暴とは聞いているが――」


 メイド長がアンジェに、


「抗議しますか?」


 アンジェが頷いた。


「使節団の立場もあるからな。強めの抗議をしておこう。リオンに連絡できるといいんだが――」


 すると、リビアが共和国の飛行船の動きが変わったことに気が付いた。


「あれ? どうやら離れていきますよ」


「――何?」



 共和国の飛行船――警備隊は混乱していた。


「ふ、ふざけるな! 何であの船があるんだ!」


「隊長、落ち着いてください!」


 艦橋で慌てている警備隊の隊長は、これから臨検しようと思っていた飛行船がアインホルンと同型艦であるのに気が付いて混乱していた。


 アインホルン――共和国で暴れ回った最悪の飛行船。


 それと同型艦があるなど聞いていなかった。


「形が似ているだけです! あのような飛行船が何隻もあるなど考えられません」


 部下の言葉に隊長が激怒する。


「一隻あるなら、二隻目があってもおかしくないだろうが! アレが似ているだけ? 同じような飛行船が何隻も側にいるじゃないか! や、奴ら――もしや、アレを量産したのか?」


 共和国のプライドを叩き折ったアインホルンと同型。


 そして、よく似た形状の飛行船が沢山。


 隊長は悪夢でも見ているような気分だった。


「――臨検は中止する」


「隊長、それでは王国に舐められます!」


「ならお前がやれ! 私は絶対に嫌だぞ。絶対だ!」


 この警備隊長――港でアインホルンに乗っていた飛行船を沈められていた。


 抵抗しても無意味。


 あまりの性能の前に、共和国の船乗りとしてのプライドやら色々とへし折れていた。


 部下はその時に陸にいたので、アインホルンの強さを知らない。


 説明は聞いているだろうが、自分の目で見ていないのだ。


 すると、双眼鏡でリコルヌを見ていた部下の一人が叫んだ。


「隊長! 奴ら、陣形を取り始めました!」


 隊長は青い顔をして、そして泡を吹いて気絶してしまった。



 使節団を率いている代表は――リオンの兄であるニックスだった。


 正確には、リオンの知り合いたちが多い一団だ。


 まとめ役をやらされているに過ぎない。


 艦橋で艦長と話をしているニックスは――。


「共和国に入るし、整列しておくか。移動中に訓練していて良かったな」


 艦長は笑っている。


「造りが似ているおかげですかね。速度を合わせるのが楽で良いですよ」


「うちの工場で作ったからかな? リオンの奴、色々と考えていたのか?」


「リオン坊ちゃん――いえ、伯爵は意外と凄い方ですね」


 地元では微妙なリオンの評価――理由は、浮島を出るまでは良くも悪くも男爵家の三男坊に過ぎなかったためだ。


 いきなり伯爵になったと言われても、地元の人間も理解が追いつかない。


 ほとんど一年で男爵から伯爵にまで昇進したのだ。


 周囲の人間も首をかしげている。


「俺の胃痛のことも考えて優しくして欲しいよ。さて、使節団だし格好をつけておくか。ほら、整列」


 艦橋が慌ただしく指示を出していく。


 周囲の飛行船がリコルヌを中心に陣形を組み始めると、港を出入りしている飛行船が避けていく。


 慌ただしく港へと案内する小型の飛行船が飛んできて、使節団を誘導するのだった。


「お、聞いていたよりも対応良くない?」


 ニックスがそう言うと、艦長も同意する。


「上から押さえつけるように臨検してくると聞いていましたけど、やっぱりただの噂だったんですね。真上に来た警備隊の飛行船も、きっと何かの手違いでしょう」


 リオンからの手紙で、共和国は感じ悪いと知らされていたニックスが肩をすくめる。


「リオンの奴が感じ悪いって言っていたけど、きっとあいつが何かやったんだろ。会ったときにでも確認しておくか」


「暴れ回ったと聞いていますが、大丈夫なんでしょうか? 戦争になりますかね?」


 心配する艦長にニックスが言う。


「ないとは思うけど、あいつのことだからなぁ――その辺りのこともしっかり聞いておくか」


 ニックスは思う。


(弟に振り回される兄貴って情けないな。もっとしっかりしないと)


 弟の方が出世もして、婚約者が二人もいて――普通なら嫉妬してもおかしくないが、ニックスから見てリオンは嫉妬の対象ではなかった。


 何故か?


(それよりせっかく外国に来たし、観光でもしていくか。親父やお袋、それにコリンにもお土産を買わないと)


 ――今が幸せだからだ。


 むしろ、リオンの方が羨むような暮らしをしているのがニックスだった。


苗木ちゃん( ゜∀゜)「聞いて! 凄いの。ビックニュースなの! 実は――」


( ○);y=ー( ゜д゜)・∵. ターン「ふびゃほぃ!」


( ○)「……」


(○ )「お前は知りすぎたのよ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 元四男君、今は三男君は純粋に育ったかなあ
[一言]  この後、発狂させられたのか……ww
[一言] 今度は俺の(ターン!)
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