幕間 クレアーレさん頑張る その2
近況報告です。
――忙しくて更新できない。
以上です。
「くそっ――どうしてだ」
アーロンがベッドの上で奥歯を噛みしめている。
上半身は裸で、下半身は布団に隠れている。
悔しさを滲ませるアーロン。
窓からは朝日が差し込み、コーヒーカップを二つ持った先輩が部屋に入ってくる。
ここは先輩の部屋だ。
黒髪オールバックで、シャツのボタンを付けていない格好の先輩。
前が開いており、鍛えられた上半身が見えていた。
「また二日酔いか、アーロン」
「あ、あぁ、悪いな、先輩」
飲みに行く度に酔い潰れてしまい、目を覚ますと決まって先輩の部屋にいる。
最初は怪しんだが、こうも続くと感覚が麻痺してそんなものかと受け入れていた。
いや、それよりもアーロンには気になることがあった。
「他人行儀はよしてくれ。ダリルと呼んでくれていいぜ。歳も近いんだからよ」
「悪いな、ダリル」
先輩だが、気さくな男にアーロンは警戒していた。
いや――。
(くそ――どうしてだ。どうして、胸がときめくんだ!)
リビアを狙っていたはずなのに、気が付けば酔い潰れていることが多くなった。酒に弱いのかと自信をなくし、今では女より男を目で追っている自分がいる。
アーロンはそんな自分が悔しかった。
ダリルからコーヒーを受け取り、飲むとおいしかった。
「うまいな」
「コーヒーには自信があるんだ」
ダリルがベッドに腰掛ける。
ダリルのベッドだからおかしくはない。
おかしくはないのだが――アーロンは背筋に悪寒が走らないのに気が付いた。
(前はもっと警戒して、身の危険を感じていたのに!)
アーロンは自分の変化に戸惑っていた。
◇
アンジェの部屋。
クレアーレは子機からの映像と音声を確認しつつ、満足そうに青い一つ目を縦に振っていた。
『素晴らしい結果ね。状況を作るだけでこんなにも簡単に惚れるなんて』
そんな危険な台詞を聞くのは、アンジェの部屋で着替えをしていたリビアだった。
「――アーレちゃん、何か変なことをしていませんか?」
『変なこと? 失礼ね。動物実験をしているだけよ』
動物実験と聞いて、リビアが怒るのだった。
ただし、リビアは実験動物をマウスか何かだと思っているようである。
「十分に変なことです! 一体何をしているのか教えなさい!」
クレアーレは呆れたように答えるのだった。
『何をしていると思っているの? リビアが思っているようなことはしていないわよ』
「で、でも、惚れるとか、素晴らしい結果とか――」
きっと注射器やら、解剖やら、そういった実験だと思っているのだろう。
クレアーレは本当に呆れるのだった。
『あのね、実験にも色々とあるのよ。薬なんか使っていないわよ。今は、どんな状況なら愛が芽生えるのかを見ているだけよ』
「愛ですか?」
『そう、愛よ。好きでしょ、愛。私も大好きよ』
リビアが困惑している。
「愛を実験するなんていけないと思います。もっと愛は自然で――何て言うか、惹かれ合うようなものだと思います」
『マスターと貴方たちみたいに?』
リビアが顔を赤くしていた。
「え、えっと――はい」
『でも、マスターと接点がなければ――言い方を変えれば、状況が違えば愛が芽生えたか分からないわよね』
答えに困っているリビアに、クレアーレは優しく諭すのだった。
『大丈夫よ。愛とか言ったけど、もっと簡単に言えば仲良くする方法を調べているだけだから。ちょっとタイプの違う個体を、特定条件下に押し込んだら仲良く出来るか調べているの』
「そ、それなら問題ないのかな? で、でも、やっぱり駄目です。アーレちゃん、時々怖い雰囲気を出していますから」
クレアーレが文句を言う。
『酷いわ。マスターならきっと喜んで賛成してくれたわ。むしろ、お前は甘いって叱ってくれたかも知れないわ。いえ、もっとやれ、って言ってくれたはずよ。それなのに――リビアの馬鹿! 分からず屋!』
そう言って部屋から出て行くと、リビアが手を伸ばして追いかけてきた。
「アーレちゃん待って!」
◇
廊下。
(こうしておけば、しばらくは罪悪感を抱えて私に優しくなるわね)
自身を探し回っているリビアを眺めつつ、クレアーレは身を隠しつつ今後について考えていた。
(凄いわ。女好きの男が、男にときめくようになるのに薬なんて必要ないのね。惚れ薬を用意するべきか悩んだけど、これには私もビックリよ)
悪い子をお仕置きするつもりだった。
だが、その過程で薬の実験をすればはかどるのではないか?
そんなクレアーレの目的により、犠牲になった数名の男子たち。
クレアーレは、今日も楽しく学園で過ごしています。
リオン(;゜д゜)「お前の中で俺の評価ってどうなってるの? 言わないよ。もっとやれとか、お前は甘いなんて言わないよ。むしろドン引きだよ」
クレアーレ(○ )『マスターはそんなことは言わないわ! もっとやれって言ってくれたはずよ!』
リオン(#゜Д゜)「言わねーよ! あんな野郎はさっさと退学処分にして、社会的に潰してやれば終わりだろうが! お前、悪質すぎるんだよ! 俺でもそこまでするのはためらうわ! 女好きを男好きにするとか、酷いにも程があるだろ!」
クレアーレ(○)『そのためらいのなさ、素敵!』
ルクシオン( ●)『流石はマスターです。惚れ惚れするぐらいの外道ですね』