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強者への道

 PD20階層(京都Dのデータ参照)。

 そこに俺たち四人とクロがいた。

 目の前にあるのは大きな扉。

 その先にあるのはボスの間と呼ばれる部屋だ。


「体力、魔力確認。問題ないな」

「大丈夫よ」

「うん、問題ない」

「行けます」

「ワフ!」


 よし、クロも準備OKだな。

 どこか緊張感に欠けるやりとりだが、気を抜いているわけではない。

 俺たちは扉を開ける。


 中から出てきたのは、とても大きな白い犬。

 犬神だ。

 最初に仕掛けたのは姫だ。


「分身!」


 四体の姫の分身が現れた。

 熟練度を上げたため、四体までその分身を増やすことに成功。

 体力は全員本体の1/20とかなり弱く、そのため広範囲の攻撃などが来たら一たまりもない。

 しかし、犬神相手にはかなり有効だ。

 

「「「「「短剣術、朧突き」」」」」


 朧突き――三体に分身し、同時にナイフで攻撃をする短剣用のスキルだ。

 スキル玉ではなく、レベルアップにより覚えた現在の姫の得意技である。

 それを分身とともに使ったらどうなるか?

 姫の数が十五に増える。

 短剣による小さな傷は、この犬神のような大型の魔物に攻撃したところで、致命傷に至ることはない。

 それでも十五の短剣による攻撃を食らえばさすがにたまったものではないだろう。

 塵も積もれば山となる――と言ったら姫の攻撃が塵みたいで失礼だが。


「解放:火薬精製クリエイトガンパウダー――解放:熱石弾ホットストーンブレッド――」


 姫の間を縫うように、ミルクの持つ銃から弾が放たれた。

 その弾は真っすぐ犬神の眉間へと飛んでいく。

 

「――ブレイクっ!」


 着弾し、その弾速がゼロとなると同時に銃弾が弾けた。

 犬神が悲鳴を上げる。



 怒りに満ちた犬神が力を込めた。

 咆哮による攻撃をしてくる準備だ。

 犬神の咆哮を受けたら、一秒間身体がすくみあがってしまう。

 通常の一秒だと大したことはないが、戦闘中の一秒は命に係わる。


 耳を塞ぐ余裕もない。


『アオォォォォォォォォォン!』

『ワオォォォォォォォォォォン!』

 

 犬神が吠えると同時に、真正面からクロが吠えた。

 咆哮と咆哮がぶつかり合い、その効果を相殺させる。

 

神風雷槌(ゴッドブレスハンマー)


 雷を伴ったアヤメの風魔法による攻撃が犬神を圧し潰そうと襲い掛かる。

 その威力は俺の獄炎魔法にも迫る勢いだ。

 だが、それでも犬神は倒れない。

 二十階層のボスということだけはある。

 それでも、もう終わりだ。


 応用剣術其之六。


斬絶華(きりたちばな)


 俺がそう言い終わったときには全て終わっていた。

 布都御魂を鞘に戻す。

 犬神の顔から、血しぶきが、まるで鮮血の華を咲かせたように噴き出した。

 そして、そこには巨大な魔石と犬神の牙、Dコインが残っており、自動的にインベントリへと回収される。


「記録は!?」

「47秒――新記録です!」

「よっしゃ! 50秒切った!」


 いやぁ、今回もワンサイドゲームだったな。

 最初に犬神を倒したときはかなりきつかった。

 身代わりの腕輪も砕けたし、特に咆哮を受けて姫の分身三体(当時は四体分身ができなかった)が全員倒れたときはヤバイって思った。

 クロの咆哮で犬神の咆哮を相殺できるとわかったときからは結構余裕が出てきた。

 だんだんと倒す速度も上がっていき、いまではタイムトライアル感覚で倒している。


 しっかし、全員強くなったな。

 俺と姫のレベルは並んで84、アヤメとミルクは並んで80。

 途中から成長の指輪と成長のリボンを使いまわしてレベル上げをしていたが、なんか俺だけレベルの上がりが早い。

 恐らく、パーティ全員で魔物を倒した場合の経験値の振り分けによるものだと思う。

 単純に破壊力だけならアヤメの風魔法が一番強いが、いつも全力で魔法を使うことはできない。

 ミルクの薬魔法と炎石魔法の組み合わせによる銃の攻撃は使い勝手はいいが、威力はアヤメに劣る。

 俺は攻撃値が遥かに増して、敵のトドメを刺したりする機会も多いし、肩代わりスキルのお陰で仲間のダメージを引き受けることもしている。

 ちなみに、姫が俺と並ぶレベルなのは、分身を使って効率よくレベル上げをしているからだ。

 何しろ四体分身を生み出せば五倍の効率でレベル上げができる。


 そのうち俺のレベルも抜かれるかもしれない。


 20階層の安全マージンはレベル95。ボスを倒すのはレベル100と言われている。

 まだまだレベルは足りないが、それでも結構余裕で倒せるようになったのは、俺たちが覚醒者と尖端異常者(シャープアブノーマル)のパーティだからだろう。


「今日はこれで終わりね。帰ってみんなのステータスを確認しましょ」


 姫がそう言った。

 そういえば、レベルは上がるたびに聞いていたが、ステータスを確認するのは久しぶりだな。

 体感一カ月ぶりくらいか。


 一階に転送する魔法陣を使って俺たちは一階層の寝室に戻った。

 既にこの部屋の代金は最終日の今日までダンポンに支払っている。

 四人でステータスを紙に書いた。


――――――――――――――――――

牧野ミルク:レベル80


換金額:777777D(ランキング:1018〔JPN])

体力:852/852

魔力:560/560

攻撃:592

防御:580(+10)

技術:592

俊敏:580

幸運:21

スキル:炎石魔法 火魔法 土魔法 薬魔法

    琴瑟相和 胸部装甲 基礎銃術 応用銃術

    簡易調合 応用調合 禍福倚伏(かふくいふく)

――――――――――――――――――


 ミルクのステータスだ。

 彼女には銃術というスキルが生えた。

 この世界でダンジョンの中で銃を使うのはミルクだけだ。

 俺がレベルアップで基礎剣術や応用剣術を手に入れたように、スキルというのは持っている装備や環境によって変化するらしい。

 ちなみに、胸部装甲は防御値が10上がるだけでなく、胸へのダメージを防ぐ力がある。

 禍福倚伏は状態異常に陥ったとき、その効果を軽減すると同時にステータスが上昇するスキルだ。

 たとえば先ほどの戦い。

 犬神の咆哮を受けたとき、俺たちならば一秒動けなくなるが、ミルクは0.5秒で動けるようになり、かつその直後一分間ステータスが3割上昇するという検証結果が出ている。

 幸運値が低く、敵の状態異常を受けやすいミルク向けのスキルとも言える。


「運の悪さを利用するスキルって、なんだか嫌な感じだよね」

「そうかな? ミルクちゃんの弱点を補ういいスキルだと思うわよ」

「胸部装甲ってスキルが凶器ね」


 姫がミルクの胸元を見て言う。

 うん、俺はセクハラだから何も言わない。


――――――――――――――――――

東アヤメ:レベル80


換金額:777777D(ランキング:1017〔JPN])

体力:839/839

魔力:1220/610(+610)

攻撃:505

防御:405(+79)

技術:403(+81)

俊敏:484

幸運:55

スキル:風魔法 ラーニング 琴瑟相和 天衣無縫 

    雷魔法 チャージ 魔法融合

――――――――――――――――――


 アヤメのステータスだ。

 ミルクとそれほど大きな差はない。

 面白いスキルで言えば、天衣無縫。

 これは攻撃、防御、技術、俊敏のステータスのうち、低い物二つを、上から二番目のステータスに合わせてくれるというスキルであり、これにより欠点が補強できる。

 スキルの数は少ないように思えるが、ラーニングを何度も使ったお陰で、彼女は現在ステータスには表示されていない魔物の便利スキルを合計七種類まで使えるようになっている。


「はぁ……まだ東のままですか」


 ステータスを見るたびにアヤメは落ちこむ。

 水野さんが天下無双に入社したとき、アヤメは自分だけ名前に「野」が入っていないと拗ねた。

 その時、水野さんにこっそり、俺と結婚したら名字が変わると教えられたらしい。

 あの瞬間に、水野さんはアヤメが俺のことを好きだって見抜いていたんだな。

 まるで名探偵のような推理力だ。


 さて、次は姫のステータスだな。

泰良と姫のステータスは次回


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