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19.美の女神は追い出し作戦に取り掛かる2

「これは早々に、公爵家から出て行ってもらったほうがいいわね。リンドベルド公爵家の名を騙り好き勝手やって、その名を貶めるなど万死に値する敵対的行為です。わざわざわたくし自ら結婚相手を探してあげるのですから寛大な処分と心得なさい」


 本当に、いわゆる名誉棄損で裁判にぶっこんでもよろしかったんですのよ?

 勝つ自信はありますので。だって、あなたはしがない子爵令嬢。

 きっと裁判もリンドベルド公爵家の方に忖度してくれます。そうすれば、よくて一生修道院、悪くて刑務所暮らし。

 どっちでもいいですけど、結婚したほうがいいと思いますよ。


「どなたか。立候補者はいらっしゃるかしら? もしいるのなら、きちんとリンドベルド公爵家から持参金も付けますわよ」


 一応、リンドベルド公爵家の後ろ盾はあると思わせながらも、事実はただの厄介払い。

 利があるようで、全くない、むしろ害しかないけど、このお茶会に軽い気持ちで来たのが運の尽き。

 男性陣はさっと青い顔をしながら俯いた。

 彼女は既に結婚適齢期を超えていますが、一応美人ですから楽しめるとおもいますよ。

 連れまわすアクセサリー扱いにも出来ます。


「あら、困ったわ……お一人くらいいるかと思ったのに――……あまりオモテにならないのね、エリーゼさん。でも、こうなってもいい様に、旦那様と相談してきましたのよ。もう相手の方には打診して、とても喜ばれているんです」


 馬鹿にされまくりのエリーゼは身体をわなわなと震わせている。 

 顔には憤怒。

 そんな顔ではモテるお顔でも一瞬で男性は引きますよ。ほら、見て見なさい。

 怯えていますよ――って、怯えているのはわたしにか? どっちでもいいか。


 ここまでは茶番。

 さすがに、これから先のある若者にこの不良物件を押し付けるのはかわいそうだとわたしが主張して、取りやめになった。

 わたしの主張を汲んでくれて、旦那様がきちんと別の縁談をまとめてくれた。


「少し年上ですけど、あなたもいい年ですものね。釣り合いが取れると思いますわ。北の鉱山都市をお持ちのガーシュ伯爵様です。四人目の奥様と最近お別れになったそうで、新しい方を探していらしたようですわ。容姿をお伝えしたら、とてもお喜びでしたよ」


 その言葉で、エリーゼだけでなく、招かれた令嬢たちが蒼褪めた。

 ガーシュ伯爵は鉱山都市を持っているお金持ち貴族だけど、その容姿はまるで爬虫類のようで、しかも愛人も大勢いる。

 年はすでに四十を超えて、伯爵に似た息子が跡取りとして決まっている。

 なんでも、二人とも特殊な性癖があるとかで、二人で後妻の奥様を可愛がるんだとか。

 

 よかったね、エリーゼ。

 若い男にも可愛がってもらえるよ。

 わたしは絶対嫌だけど。


「な、なんですって!? そ、そのような馬鹿な事ある筈がないわ! クロード様がわたくしをそのような男の元に送るなんて! それにアンドレ様だってきっと反対なさるに違いないわ!」

「まあ、わたくしが旦那様と一緒に一所懸命に探したんですよ。ふふふ、そんなに興奮なさらないで。もちろん、お義父様の許可もありましてよ。ほら?」


 長く広がる袖から手紙を取り出し、エリーゼの方へ投げると、彼女はそれを奪い取るようにして読み、顔を蒼褪めさせた。

 ようやく現実を理解してくれたようでなによりです。

 そんな、アンドレ様が――と、信じられないようで呟いていた。

 わたしはそんなエリーゼを放置して、このお茶会に招かれている他の令嬢子息にそうだわとポンと手を合わせて困ったように微笑む。


「しまったわ。エリーゼさんだけ特別扱いはいけなかったわね。皆様にもきちんと良縁を取り持たなければ……せっかくエリーゼさんと仲がよろしいんだもの。やはり仲良く結婚したほうがよろしいわよね?」

「そ、そのような――! わたくしどもの事で公爵夫人の手を煩わせるようなことはできませんわ!」

「え、ええ! そうです。自分たちの事は自分たちで解決してみせます」


 エリーゼの結婚相手の事を知り、全員が口々に辞退していく。


 そうか、そうか。まだ結婚したくないか。みなさんお若いものね。

 でも、わたしは忘れていませんよ。

 エリーゼと一緒にわたしを笑いものにしていた事を。

 今は見逃してあげますけどね。


「では、ぜひ頑張ってください。良い殿方と巡り合えることを祈っておりますわ」


 最後にラグナート曰く女神スマイルで彼女達を見ていると、遠くから旦那様がずんずんと大股で近づいてくるのが見えた。

 遅ーい!

 全部終わったころに姿を見せるとは、絶対にわざとだ。


「終わったか?」


 悠々とそんな事を言ってくる相手を横目でにらむ。

 旦那様はわたしの方に近づき、まるで最愛の妻だとみんなに見せつけるように、わたしの頬に口づける。

 一瞬、手に持つ扇で思いっきり張り倒しそうになったけど、我慢した。

 わたしが結構我慢強くて助かりましたね、旦那様。

 あなたのその顔が、確信犯である事は分かっておりますのよ!

 

「ク、クロード様!」


 エリーゼは最後の希望の様に、旦那様に縋りつく。

 しかし、旦那様は非情な言葉をエリーゼに投げた。

 

「エリーゼ、今日中に迎えが来る。早々に部屋に戻って準備しろ。ああ、ミリアム夫人も付き人として同行させても良いと返事がきた。良かったな、母親と別れなくてすんで――部屋に連れていけ。迎えが来るまで監視して、一切外には出すな」


 従僕にそう命じると、彼らはエリーゼを支えてその場を去っていく。

 ちなみに、ミリアム夫人はすでにエリーゼの部屋に押し込んでいるらしい。

 本当に全部をまとめて追い出す予定。

 ミリアム夫人も美人で良かったですねぇ。おかげで引き取ってもらえて。

 わが継母なんて、美人だったのに、あんな見る影もないんですけど、努力し続けている人ってある意味尊敬するわ。


「そういえば、この集まりは一体なんだ?」

「さぁ? わたくしは良く分かりません。仲が良いお友達を招いた個人的なお茶会だったようですが、結婚のために北に向かう前にお別れ出来て良かったと思います」


 この集まりはリンドベルド公爵家主催ではないと言っておく。

 そして、下手なことを言いふらせば、次はお前たちの番だと脅しも忘れない。


「申し訳ないけど、エリーゼさんは急遽結婚が決まったから、今日はお引き取りいただいてもよろしいかしら? あら、そうだわミシェルさん。今度ぜひ遊びにいらしてね」


 なにせ、彼女とは一度ちゃんと話してみたかった。

 席も譲ってくれて以降ずっと立たせてて申し訳なかったし。察しもいいので、とっても好きになりそう。


「光栄ですわ、公爵夫人」


 ミシェル嬢は勝ち気な笑みを浮かべると、わたしと旦那様に頭を下げて、帰宅していった。そしてミシェル嬢に倣って全員が言い訳の様なあいさつをして去っていく。

 完全に怯えられていた。

 年齢的にはわたしより年上が多かったんだけどな。



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