魔力糸
前王様の膝の上で、私は紅茶を飲むように進められ、受け取ることとなった。
「少し休め」
「う?」
ぜんぜん疲れてないんだけどなぁ?
「普通なら、これだけの加護縫いは1日仕事だぞ」
「そうなのですか?亅
ロダン様も知らなかったのか、前王様の言葉に目を見張った。
「あぁ、ロダンは・・・・ヌイール家に、妙な目を付けられているからなぁ・・・・」
「そうですね、彼らが等級を落としたのも、我が家が等級を上げたことは、無関係なはずなんですけどね」
「よくこの子を引き取れたものだな」
「ええ、そうだユイ、聞こうと思っていたのだが」
「にゅ?」
「どうしてヌイール家では、加護縫いをしなかったのだ?これだけの腕があれば、あんな状態になるほど虐待もされなかっただろうに」
あー~、そりゃ聞かれるか
加護縫い出来ない、ヌイール家の落ちこぼれっていうのが世間一般に知られた・・・・私の評価だ。
普通の貴族の娘は十二歳で社交デビューすると、ここで教えてもらった。
その当時生家は、私を加護縫い出来ない出来損ないなので、ヌイール家を名乗らせるつもりはないって、言いふらしていたらしい。
生涯ヌイール家で、奴隷フラグだったんだなぁ・・・・・・
本当、ロダン様よく私を引き取れたな?
針子扱いが良かったのか?
でも、話を聞いていると、ロダン様ヌイール家に良く思われてないみたいなのに。
おっと、聞かれたことに答えなければ
「魔力、精霊さんに、使って、ました。蜘蛛さんに、こめること、最初、知らなかった、か、ら」
うー、今日はいつもより喋っているからか、顎が疲れた。喉渇いた。
いつの間にやら、カップに浸かってる精霊さんをそのまま、カップを傾け紅茶で喉を潤した。
食べ物飲み物に、精霊がちょっかいかけてるのは何時ものことと、気にしない。
前王様は見えているからか、ちょっとビクッとしたのが分かった。
大丈夫。精霊さんを食べたりしないよ?
精霊さんも、カップの縁にしがみついたふりして、きゃっきゃっはしゃいでるし。
注意はされなかったので、続きを口にする。
「あとで、魔力、こめる、分かったけど、もう・・・・あの人た、ちの、ため、力使いたいと、思わ、な、かった亅
声が最後には、かなりかすれて細くなってしまった。
「あぁ、分かった。もう本当に休め・・・・加護縫いよりも、会話の方が疲れるようだな」
若干呆れたように、前王様に注意され、私はこっくり頷いた。
「しかし話には聞いていたが、精霊治療・・・・か」
「魔力をこめる、こめないの切り替えは、術師の領域なんですよね?」
ん?精霊治療見たいのかな?
でも、治療の必要な精霊は、今ここにはいないので・・・・
魔力糸を出し、レース編みで鍛えた腕(?)・・頭(?)で、浴衣ドレスの精霊さん達にケープを作ってあげた。
あ、うん。前王様が見えているって、分かっているはずなんだけど・・・・・・今まで気にしないで、やってたからなぁ・・・・それに私の魔力糸が、どれだけすごいことか・・・・この時の私に自覚なんてものもなかったので、気にしなかった。
「お前・・・・とんでもないな・・魔力を糸状にするだけでも、規格外なのに、そこまで自在に操れるとは・・・・・・亅
「う?」